ベートーヴェン作曲/歌曲集「遙かなる恋人に寄せて」
この曲を歌うことは長い間僕の夢であり憧れでした。というのも大変に難しい曲で、ドイツ人も敬遠しているほどの作品なのです。
7つの曲(詩の構成としては6曲ですが、音楽的な構造からすると7曲といって差し支えないと思います)からなっている歌曲集ですが、その7つの曲が途切れることなく続くという、大変大胆な構成をもっている曲で、15分ほど、長い間奏も挟まずに歌い続けることになるのです。シューベルト以前にこんな作品が存在していたことにまず驚きを禁じ得ません。ワーグナーがずーっと後でオペラにおいて行ったような、曲と曲とが有機的につながり、どんどん展開していきます。