リゴレット(エッセイその2)

アルテンブルクで4度目の公演を歌い終えました。日記にも少し書いたのですが、この4回目の公演は本来ダブルキャストのもう一人が歌うはずだった公演で、僕は全然準備していませんでした。再演のためのゲネプロの前日に歌うように言われて慌てて楽譜を見直しました。「レパートリーシステムは怖い」とつぶやかざるを得ない体験をまたしてしまいました。


この役は僕にとっていつでもすぐ歌える役ではありませんのでなおさら慌てました。僕が今まで歌ってきた役の標準的な声のウェイトからすると少し重すぎるのです。だからちょっと声の調整をしなくてはいけません。
それで歌うように言われた日(公演の3日前)の夜は楽譜をみることや演出の段取りをもう一度たたき込むことに集中したかったのですが、それもできない状況になりました。
というのは、この病気になって歌えなくなった同僚のバリトンは今稽古中のドン・ジョヴァンニでも僕とダブルキャストなのです。病気ではもちろんジョヴァンニも歌えません。本当はこの3日前の夜は僕は稽古がなかったんだけど、ジョヴァンニがいなくては稽古が成立しないと言うことで急に呼び出されました。リゴレットに集中する必要があるから、その要請には応じられないと抵抗したんですが押し切られました。僕の押しが弱いのかも知れないんだけど、相手は一応僕のシェフだし、どこまで自分の意見を通すべきなのかというのはまだまだ僕には難しくて良くわかりません。こういうのもだんだん学んでいくのでしょう。
この僕のシェフでありリゴレットとドン・ジョヴァンニ両方の演出家であるProf.Blueherはうちの劇場のオペラディレクターなわけですが、そう言う状況を知っていても彼は公演二日前の再演ゲネプロ(照明とメイクは無し)でも容赦なくダメ出しをしてくるわけです。げげげ。僕は歌詞と(ドイツ語だから誰もがなじんでいるオリジナルのリゴレットの歌詞ではないわけです)芝居の段取りを追うだけで精一杯だったのですが。本番が木曜ですから、この火曜日の再演ゲネプロは、芝居の内容よりも物理的に破綻が起こらないようにと配慮したんだけど。
いずれにしても再演ゲネプロでもダメ出しをたっぷりもらって、本番はそれらはきっちり直していきましたが。全ての公演を演出助手のクリスティアーネが見ているので、彼女に話を聞いてみましたが、どの試み(ダメ出しの直しと僕自身の新しい芝居的試み)もうまく言っていたとのことで良かった。ただメイクをちょっと変更しようと言う話は出ているようです。
レパートリーシステムの中で良い舞台をやっていくためには日本でやっていた事だけでは全然うまく行かないことはわかっていましたが、より課題が具体的になってきたようです。次のリゴレットは少し先だけど、また次の公演では新しい(別の、という意味ではなく)リゴレットに挑戦したいです。
(2001.9.9)

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