ジョイントリサイタル報告

お陰様で、無事にジョイントリサイタルを終えることが出来ました。足を運んで下さった皆様、ありがとうございました。

とにかく大変だったのは確かです。まず日程が大変だった。アラベッラの稽古が前日まであって、しかも荒立ちの時期だったので、あの難しいオペラを頭にたたき込む時期ということであり、これとリサイタルの時期が重なったのはかなりつらかった。
それから単に体力的な意味でもきつかったですね。ナクソスの本番が終わってから...


1週間足らずだし、第九までは4日。でもここしかスケジュール的に入れられなかったんですよね・・・。
それから曲目が大変だった。歌曲集「詩人の恋」が前座だったんですから・・・後は推して知るべし。ある歌い手の友人と終演後に電話で喋ったら開口一番「長いよ!」といわれてしまった。

でもね。自画自賛します。なかなか素敵なコンサートになったと思いますよ。
ピアニストの服部容子さんとは、今までちゃんとコンサートでご一緒したことがなくて、やっとそれが実現して。何度、合わせの途中で「あーやっぱり容子さんとこれやれて良かった!」と叫んだことか。
僕にとって記念碑的なプロダクションであった、2000年6月の「オルフェオとエウリディーチェ」ではかなりみっちりご一緒しましたが、これはオペラだったからね。一緒にはステージに上がっていないわけです。彼女はチェンバロをピットで弾いてくれていたとはいえ。
今回、容子さんのサポート無くしては僕の「詩人の恋」は成立しなかったです。容子さん、ありがとうね!またやろうね。
メゾ・ソプラノの石井真紀ちゃんとは、ゲラでのブラームス「愛の歌」を除くと初めての共演ですが、アンコールを別にすると一緒に演奏はしていないんだよねぇ・・・。今度はちゃんと重唱をプログラムに入れなくちゃねぇ、真紀ちゃん。でもメゾとバリトンだと選曲が難しいんだよねぇ・・・それが今回重唱を組まなかった理由でもあるから、よっぽど準備しないとなぁ。真紀ちゃんのリートに対するひたむきな思いは、演奏中も大きな刺激になりました。ありがとうよ、真紀ちゃん!
そして今回、わりと時間的に迫ってからお願いしたにもかかわらず、朗読を快く引き受けてくれた片山さん。2000年8月のコレギウム・ムジクム公演「カルメン」では合唱にのって下さっていたのです。その時の指揮者で僕の大切な友人である金井誠さんが紹介して下さったんですが、僕らがなかなか曲順を決められなかったり、朗読のテキストを作るのに時間がかかったせいでずいぶんご迷惑をおかけしてしまったのですが、嫌な顔ひとつせずいつも協力して下さいました。どうもありがとうございました!当日になるまでマイクを使うかどうかを保留したりして、不確定要素が多いのは不安だったと思うのですが、とても柔軟に対処して下さって、片山さんのおかげでこの「イタリア歌曲集」の流れを作ることが出来たと思います。

僕自身としては、後半のヴォルフ「イタリア歌曲集」ももちろん難曲ですし気になっていましたが、やはり前半の「詩人の恋」にかけている部分は大きかったので、今の時点での僕の思い描く「詩人の恋」を自分なりに納得のゆくクオリティで形に出来たのはとても大きな成果でした。
ゲラで専属歌手になってからの期間で、専属として揉まれたおかげもあり、毎度の本番をおなじ音響の劇場で歌える環境もあり、僕の発声技術が飛躍的に安定したことは間違いないんですが、今回のリートへの挑戦はそれを踏まえて計画しました。
前に書いたこともあったかも知れませんが、僕は大学時代はオペラよりドイツリートを好んで歌っていた位なのです。でもオペラを自分の仕事の中心に据えてから、技術的にも音楽的にもリートとの距離を置かざるを得ない状況になりました。この二つのジャンルを万全に歌い分けることは、僕にとって楽器を持ち替える(ピアノとチェンバロとか、あるいはアコースティックギターとエレキギターみたいな違いかなぁ。ちょっと無理やりな比喩だけど)事なのです。

端的に言うとオペラ歌手としての体を殺さずにリートの繊細さを表現に持ち込むことが、大きなネックでした。でも僕が予想していたいくつかの可能性の中で、今回の結果は最大限の成功と思っています。嬉しかったですね。
練習の時点で手応えはあったけど、本番でお客様の前に出ると出来るはずのことが出来ないという事もあるので、本番で終わったときは思わず頬が緩んでしまいました。

もちろん残された課題、新たに浮上した課題も見えているので、これらの課題達とはまたこれから向き合って行くつもりです。

そして今回のお客様!
他のところでもちらっと書きました。僕は日頃から、舞台に立つ人間はお客さんを批判することは許されないと思っているので、お客様のことについて言うのはどうかと思う部分もあるのですが、それを敢えて。
素晴らしいお客様達でした!お客様によってコンサートの雰囲気やクオリティがこれほどポジティブに影響を受けることがあるのか、という事を実感させられました。本当にありがとうございました。お客様の集中力が僕ら演奏者に伝染するんですね。

写真は打ち上げでのスナップ。ビールがくるのをうずうずして待っている4人の出演者達です。

またこういうコンサートやりたいなぁ。曲目、何かリクエストありますか?みなさん。
2002年12月24日(火)スクリプトで読み込み

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