いよいよ今日はヤナーチェク作曲のオペラ「ブロウチェク氏の旅」のプレミエであります。今回は割と気楽と言えば気楽です。作品自体が珍しいものだし、もともとのお話がかなりイカレたお話で、演出が輪をかけてイカレた感じになっているので、演じる側にしてみるとわりと好きな芝居が出来るという感じ。実際、演出のマティアス・オルダーグからはHP(ハウプト・プローベ。本番と同じ条件での舞台稽古)になってからはダメらしいダメは出ておらず、「とにかく皆がどんどん自分の役を自分で発見してさらに楽しんで演じてくれるので、僕の方からは何も言うことはない」みたいな事でね。
一昨日のゲネプロの後なんかは彼は大変満足した様子で「こんなに稽古する喜びと結果の両方がもたらされるプロダクションというのは本当に珍しい」と感激しておりました。
ドイツのヤナーチェク協会の方も来ていたそうで、この珍しい作品をなんと8回も既にご覧になったそうですが、このプロダクションがその中で最高だと言ってくれたそうです。
ブロウチェ
クを歌ってくれている、アンドレアス・コンラート氏、本当に素晴らしいです。前に書いたかも知れないけど、3週間というきわめて短い準備期間でこの大役を引き受け、芝居も歌も素晴らしいの一言。ベルリン・コミシェオパーの専属歌手で、今回は約10日後にコミシェオパーでのショスタコーヴィッチ作曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(ノイエンフェルス演出!)のプレミエを控えていて、朝はベルリンでオケあわせして、夜はゲラでHPなんて感じのスケジュールで本当に気の毒だったけど、そんな中でもきちんと結果を出すというプロフェッショナル歌手の鑑ですね。
マティアス・オルダーグもGPのあと、楽屋の彼のところに来て、「一言だけ言いたいことがある。お前は本当にScheissprofiだ」といっていました。これ、訳しにくいんだけど、無理矢理訳すと「くそったれプロ」だなぁ。つまりね、お前は本当にプロフェッショナルだ!というところにちょっとまぁ友情も込めて(?)「くそ」が入るんですな。わかってもらえるかしらね、この感覚。
この間ベルリンに家族を迎えに行ってササヤさんで寿司を食べたとき、本当はアンドレアスも来ると言っていたんだけど、このマクベス夫人の稽古が長引いてダメだった。あーササヤさんの写真をアップしようと思って出来ていない。こんどしまーす。
僕の役は、居酒屋の主人、月の世界の劇場支配人(なぞ)、1420年プラハのフス派戦争での煽動者の一人シェッフェの3役。メイクがすごくてね。デーモン ○○みたいですよ、ほんと。その上、劇場支配人の時は手の長さが2倍くらいになるわ、戦争のシーンではズボンはかずにブーツはいているし(さむい)。
芝居も演出からの要請もあって、かなりコミックにやってます。「このくらいやったらいくら何でもダメが出るだろう」と思って毎回変えてるんだけど、演出のマティアスは喜ぶばかり。結果的にえらく「変な人」になってると思います。まぁ作品にはあっていると思うけど。
写真は今回のプレミエプレゼントのカードと、楽屋でのショット。奥がブロウチェク役のアンドレアス、手前はマザール、シュテルネンフリート、ペーターの3役を歌っているウド・ショイアープフルーク君です。
2004年11月12日(金) No.356