幼稚園で粘土いじり

この週末は、ヴァルドルフ幼稚園で色々と催しがあります。来年の9月に予定されているヴァルドルフ小学校の設立に向けて行われている活動の一環ですが。これに関してはいつも書きたいと思っているんだけど、きちんと書こうとすると調べなくちゃいけないことがどんどん出てきて、遅れ遅れになるので、とりあえずちょっと書いてみます。


ヴァルドルフ幼稚園とヴァルドルフ小学校を比べると、世間での認知度というか受け入れられ方にはかなり開きがあります。ヴァルドルフ小学校では、普通の小学校とのカリキュラムの違いがその後の進路にも大きく影響を及ぼすので、「普通の」進路に進んで欲しいと思う場合にはけっこう障害というか、困難を導く可能性が高いのです。
・・・こう書くと、ヴァルドルフ小学校が普通でない子供を育てようとしているみたいですね・・・そうじゃないんです。


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前にも書きましたが、ヴァルドルフ教育では・・・というかヴァルドルフ教育だけでなく人智学全体の考え方として、人生を7年の期間で区切っています。そして強い意志の宿る肉体を育てる事を一番大事にする最初の7年期、つまり7歳までは、知性をいたずらに刺激するような教育は避けるのです。参考までに言うと第二7年期は感覚、第三7年期は思考を育てる時期といわれています。
これは今、特に日本で顕著だと思うんですが、早期教育の流れがどんどんエスカレートしてますね。お受験という言葉があるらしいけど。かくいう僕も、実は幼稚園の時に塾みたいなところに行っていたみたいです。英語習ったりスキー習ったりね。小学校を受験したもんですから。まぁいいや。
この早期教育に真っ向からぶつかることになるので、これが非難囂々なわけです。そりゃわかります。子供によい人生を送って欲しいと思う親なら、子供を優れた教育機関にいれて良い教育、ひいては良い職場良い生活環境を、と思うのはね。
でも、最初の7年期のうちに知性を刺激してしまうことで、その時に培われるべきものが培われずに先に行ってしまうのです。これがまずいわけで。
強い意志の宿る肉体を育てる、と書きましたが、ここでの「意志」という言葉は、僕が今まで使っていたような意味合いでない使われ方をしていて、慣れるのにずいぶん時間がかかりました。意志というと、すごく意識的に思考した結果として生み出されるもののように思っていたのですが。
わかりやすい説明をしてくれている方がいるので引用しますね。吉良創さんという方が「シュタイナー教育 おもちゃと遊び」という、素晴らしい著書の中で書かれていることです。
「一歳の子どもがお皿にお菓子があるのを見たとき、『あ、お菓子があるぞ。おいしそうだな。食べてもいいのかな。お母さんもいないし、食べちゃおう』とは決して思いません。お菓子を見つけたのとほぼ同時に、そのお菓子はもう口の中にあるのです。このおやつを口の中に運んだのが、意志の力です。」
すごく明快に人智学における意志という言葉を説明しています。そして続きにこうあります。
「この時期の子どもに論理的な思考を要求したり、過度の感情表現を求めることは、体づくりをしている子どもの無意識なる意志の力を奪って、明るい意識に連れていって、感情や思考という違う力に変容させてしまいます」
その前に書きましたが、感情や思考はより後の第二、第三7年期に育つべきなのです。「明るい意識」という言い方はちょっとわかりにくいかも知れませんが、これはここではネガティブな意味合いで使われていて、7歳までは明るい意識を持つべきではないと言うことなんです。どこかで「7歳までは夢の中」という本を見かけたけれど、あれはヴァルドルフ教育の本だったはずです。まさにそういう感じ。
この吉良さんの本は、本当に素晴らしいので、興味をお持ちの方は是非読んで下さい。表紙の写真を載せます。
うーむ。話がわき道でながくなる。
つまり、こういうちょっと一般的とはいえない7年期の考え方もあり、ヴァルドルフ小学校というのはなかなか理解されにくいのです。でもそのヴァルドルフ小学校が今ゲラに出来そうな勢いなのです。今、ドイツでは法律も変わって、小学校の立ち上げに関しては経済的な問題もかなり残っているんだけど、今回の運動はかなり盛り上がっているのはたしかです。今回、と書いたのは、実は今までも何度かゲラにヴァルドルフ小学校を作ろうという話があったからなのですが。
校長先生の役割をする人も決まって、その先生や近郊の都市からヴァルドルフ教師を招いて、この週末のイベントとなりました。
僕と嫁さんが参加した金曜日の午後のカリキュラムは「Das formend – plastische Element in der Waldorfpaedagogik Plastische Uebungen – Formenzeichen」訳すと「ヴァルドルフ教育における、形作る、造形的要素。造形の練習、形作り線描する」・・・めちゃくちゃ直訳だ。ヴァルドルフ教育では一般ボキャブラリーなんだけど訳しにくいです。
フォルメン(形作る)というのがヴァルドルフ小学校の最初の時期に大切なカリキュラムなんだけど、これは直訳すると「形作る」という意味です。フォームを作る訳ね。ヴァルドルフ小学校ではアルファベット一つ一つをえらい時間をかけて「フォルメン」するのです。それを僕らも少しやったのですね。
それと、この造形の練習と言うことで粘土を使ったわけです。
いやぁ、これが楽しくてね。あっという間に2時間経ってしまった。
指導してくれたケムニッツのピュッツさんという先生が素晴らしかったんだけど、うーんその素晴らしさを書く時間が無くなってきた・・・。座ってでなく立ってやることが大事だそうです。これはやってみて実感した。一つは大地からちゃんと力をもらえるかどうかという事。「あなたは歌手だからこれはよくわかるでしょう」とも言われました。その通りです。立ち方が悪かったら良い声も出ないし、良い表現も出てこないですから。
もう一つの意味は、フォルメンの時に紙の平面を斜めから見ることになってしまうからだそうです。もっともだね。
ピュッツさんが、「この粘土いじりの後、子どもたちはへとへとになります。」と言っていたんだけど、実際、僕はうちに帰ったらもうふらふらで、健登と同じ時間に寝床に尽きました。ははは。

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