新しい音楽総監督選び



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昨日の土曜日、ゲラでヨハン・シュトラウス作曲のオペレッタ「ジプシー男爵」の公演がありました。僕は参加していない演目なのですが、一度は見ておこうと思ったこともあり、見てきました。
今回見に行った理由はもう一つあって、この公演を指揮するのが来期からの音楽総監督候補の一人だったのです。この人は元チェリストらしいのですが、現GMD(音楽総監督)のガブリエル・フェルツ氏の推薦で候補に急浮上してきました。
というのも、今まで候補としてコンサートを指揮した指揮者がほとんど第二関門に進まず、僕が個人的に期待していてオーケストラ側でも大きな期待を寄せていた日本人指揮者の阪哲朗さんは同じテューリンゲン州のアイゼナハ市立劇場の音楽総監督就任が決まってしまうし、まぁ困っているわけです。


もう一人、1月のコンサートを指揮した、ゲルリッツ市立劇場現GMDも候補として残っていたのですが、うちの総裁と話をした結果、途中で辞退したとのこと。首脳陣の入れ替え直前の就任になるので、契約年数などが問題になったのかと想像していますが・・・。
3月の「椿姫」公演を指揮したギュットラー氏という、大変有名なトランペット奏者を親に持つ若き指揮者も候補として残っているはず。あとは4月10日にやはり「椿姫」を指揮するスウェーデン人の指揮者ですかね。
さて、「ジプシー男爵」を振った指揮者ですが、僕は客席から見て、聴いていた範囲では大変好感を持ちました。指揮はわかりやすいし、とにかく落ち着いている。噂だと30歳くらいという事なんだけど、初めてのメンバーとオーケストラ稽古なしで公演を振ったことを考えれば、大変なことです。
あと、オペレッタというと伸び縮みが激しい演奏になるんだけど、これをうまくこなしていました。オーケストラメンバーの話を聞いても、反応はかなり良かった模様。
ただ、GMDともなると、常任指揮者とは違って、オーケストラメンバーの要求も高くて、大変なことを無難にやってのけただけでは高い点数はもらえない。終演後すぐにオーケストラのメンバーで投票を行っていましたが、どうなるか、見守りたいと思います。どうもきまりの上では歌手も投票権を持っていて良いはずらしいんだけど、まぁそう言う話はあまり聞かないですね。僕らは見守るだけ。
さて、この「ジプシー男爵」はラープシュレーガー女史による演出ですが、この人は新国立劇場でもうすぐ「コシ・ファン・トゥッテ」を演出するんじゃないかな。新国立劇場では以前にマノンの演出助手をやって、その時の評判が良かったとか。
ライプツィヒで魔弾の射手か何かを演出して話題になったと聞いていますが、僕自身は稽古にも乗らなかったし、会ったことはあったけどきちんと面識はないまま稽古期間が終わってしまった。
これは全くオペレッタなんだけど、彼女はオペレッタじゃないものを作りたかったようで、全体的に暗い舞台で、快活さは全くない舞台でした。ちなみにお客の評判は大変悪いです。ゲラのお客さんはスタンダードなオペレッタが一番の「好物」ですからね。こういう演出は好まれないです。
僕自身は、見ていてこの演出どうこうはともかく、歌手の演技スタイルの方が気になったまま3時間が過ぎてしまった。歌っているのはもちろん僕の知っている歌手ばっかりなんだけど、主役のバリンカイのテノールとか、その相手役のザッフィとかが、普段オペラの割とシリアスなものを歌っている歌手なんですね。つまりオペレッタを普段歌わない人たちなのです。
喜劇の方が悲劇より難しい、というのはよく言われることだと思うし、僕もそう思う。一言で言ってしまえばそう言うことなんだけど、シリアスなオペラでは、やはり所作よりも声、歌に語らせることが多いんですかね。だから、所作、芝居がどうも重めになってしまって、オペレッタとして楽しめない。
この人たちがキャスティングされたのは、演出の方向性として軽いオペレッタでなく、シリアスな方向を目指していたことも関係なくはないでしょうね。でも、作品の良さはでませんでしたねー。むずかしいです。
僕もあまりオペレッタはやっていないんだけど、喜劇は大好きだし、モーツァルトの喜劇は大変好んで演じるわけですが、これはやっぱり演じる上での覚悟が全然違って、フィジカルにも全然負担が大きいのです、喜劇の方が。だって、突っ立って歌い続けるわけに行かないんだもの。逆にシリアスなものでは、僕としては無駄をできるだけ省いて演じるのが良いと思っているし。
一応意識はしているけど、こういう事は肝に銘じて、自分もオペレッタなぞ歌うときは場違いな芝居にならないように気をつけなくちゃ、と思います。

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