クリスマス第二休日の26日には、モーツァルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」の公演がありましたが、おそらくこれが最終公演になるようです。少なくともアルテンブルクではこれが最後、という話は知っていたのですが、ゲラに持ってこないことが決定したようで・・・。好きなオペラなので残念です。この最終公演は、フェランド役のカーステン・ラウが喉頭炎になったこともあり、結構どたばたした公演になりました。
どうもこの「コシ・ファン・トゥッテ」というオペラは、集客に関しては優れた成績を残せないようで、話を聞いてみるとドイツの他の劇場でも、日本でも同じような状況な様です。
前にニュースのページでもお伝えしたと思いますが、我々のプロダクションも何度か公演中止になっています。ひどいときは前売りチケットが50枚を切ったときもありました。面白いオペラなんですが、「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」に比べると、やはり知名度は低いし、固有名詞ではないイタリア語がタイトルになっているのもマイナスなのかなぁと思います。
本来歌手の同僚であったフーゴー・ヴィークの演出でやったわけですが、彼はドン・アルフォンゾの立場からこのオペラを熟知していて、演出の内容は派手ではないが丁寧な作りで、それはインテンダントのマティアス・オルダーグも評価しているのですが、いかんせんお客様の入りが悪すぎると言うことで、来期への引き継ぎは断念したようです。
最終公演と言うこともあって、舞台で写真を撮ったのですが、何だか僕、すごく小さく見えますね・・。確かに隣にいるカーステンは僕より大きいんだけどね・・・。八百屋の舞台で下の方に立つとこんな風に見えるのか・・・。
さて、この日のどたばたというのは、書いたとおりカーステンが急に喉頭炎で公演をキャンセルしたことから始まりました。
モーツァルトのオペラ、特にチェンバロとのレチタティーヴォを含むオペラは、舞台上の歌手同士のあうんの呼吸が舞台の進行に不可欠で、急に誰かがピンチヒッターで入るのは大変難しいので、今回もカーステンは舞台で演技をして、ピンチヒッターの歌手は袖から歌だけ歌うことになりました。ハルバーシュタットの専属の中国人テノール、シャオ・トン・ハンさんが来てくれました。ハレのプロダクションでフェランドを歌ったとか。
本番当日に、彼との申し合わせをするための稽古があったのですが、オーケストラとのナンバーを中心に稽古が行われて、僕は「うーん。レチタティーヴォの方が危ないんだけどなぁ・・・」と思っていました。演出助手のクリスティアーネも同じ事を思っていたようで、でも彼女からは指揮者に進言できずに青くなっていたので、僕の方から提案して、少なくとも男性3人のレチタティーヴォのタイミング合わせはしてもらう事が出来ました。
シャオ・トン・ハンさんは、遠くから来ていきなり知らないプロダクションで歌うというのにとても落ち着いていて、テノールでこの大変な役をこれから歌うのに稽古にもきちんとつきあってくれて、大変プロフェッショナルな方でした。同じアジア人でも大陸の人は違うなぁと思うことが良くあります。
本番は、やはり想像通りで、最初はかなりぎくしゃくしました。カーステンは僕の右にいるのに声は左から聞こえてきたりするわけですからね。
カーステン自身もこの二人羽織は初めてらしく、結構居心地が悪いようでした。まぁ当たり前だよね。キャンセルした罪悪感もあるだろうし。彼としては自分が口を開けてテキストを行っているように演じるべきか口をずっと閉じているべきかで悩んだようです。最初は「口を閉じて芝居するから!」と決めていたのですが、やはり思い直して一緒に口を動かすことにしたのですが、そっちの方がずっと良かったみたい。
シャオ・トン・ハンさんも芝居のタイミングをかなり計ってくれたのですが、それでも芝居が歌に間に合わなかったり、逆に時間が余ったりするところはたくさんありましたねー。まぁ仕方ない。
かわいそうだったのはグリエルモのベルンハルト。いつも隣で歌っている人が急に黙っているから、すごく歌いにくかったでしょう。それに彼も調子を崩していて、でも二人病気です、とアナウンスするわけにも行かず、最終公演を公演中止にするわけにも行かず、かなり無理して歌ったようです。でも、色々無理な要素が重なって、声的にはかなり辛そうなところがありましたね・・・。
指揮者で音楽総監督のソレーン氏が最初に、この代役について舞台に出てアナウンスしたのですが、「相手役のソプラノ、フィオルディリージに皆さんが少しでも同情してくださると嬉しいです・・・」みたいな言い方をしていました。でもグリエルモに同情してもらった方が良かったかなぁ。
不思議なもので、こういうハプニングがあると、かえってお客様の集中力とかが上がるのか、公演自体の集中力は上がって、カーテンコールは大体とても反応が良くなります。この日も最後は拍手喝采という感じで、これを聞いているとやっぱりこれで終わりというのはもったいないなぁ・・・。
このプロダクション、もうゲラに来ないんですか? 楽しみにしてたのになぁ。僕はフィオルディリージの彼女をまだ聴いたことないんですよ。彼女、コーブルク出身の人で、この間ここの教会で歌ってたけど、それも聴き逃してしまった。
確かに、このオペラでお客さんを集めるのは簡単ではないようで。一方で声楽的な準備って言う意味ではけっこう大変なオペラだし。
このオペラ、コーブルクでも6月プレミエでやるんだけど、おそらく夏休みまで合わせて8回か9回くらいで終わりでしょうな。音楽監督はフィガロやりたかったみたいだけど、キャストの問題で実現しなかったらしい。
よく考えると魔笛を除くモーツァルトのオペラってけっこう集客が大変かも。演出にもよるんだろうけど。
ご無沙汰しています。
先日はご丁寧にカードを有難うございました。父方の祖母の見舞いや大掃除の手伝い等、日本に居たら結構やる事があり、お返しができなかった事、お詫びします。
上記《コシ・ファン》の記事、拝読しました。残念な話です。何とかゲラの公演を拝見したかったのですが…(泣)。
>Tomさん
こんにちは。フランツィスカは素晴らしいソプラノですよ。そう、コーブルク出身ですよね。
コシ・ファン・トゥッテがこんな状況でも「マイ・フェア・レディ」はプレミエから6年経った今でもチケットが売り切れるそうです。11月プレミエだったレ・ミゼラブルもすごい人気です。やっぱりミュージカルには勝てないのかなぁ。
>hatsukanoさん
こんにちは。
うーん。残念でしたね。「コシ・ファン・トゥッテ」だと、hatsukanoさんの場合は、グリエルモ?アルフォンゾ?