17年にわたるドイツ滞生活に終止符を打ち、2012年秋に日本に帰国。12年の長きに渡って専属第一バリトンを務めたドイツ、デューリンゲン州のアルテンブルク・ゲラ市立歌劇場では、リゴレットでの華々しいデビューの後、ドン・ジョヴァンニ、さまよえるオランダ人、ナブッコ、ヴォツェクのタイトルロールの他、「椿姫」ジェルモン、「トスカ」スカルピア、「ローエングリン」テルラムント、「オテロ」ヤーゴ等を歌った。そのどれもが絶賛され、今までに演じた役は66役を数える。「この劇場を引っ張るスター・バリトン(ドイツ中部放送)」と評され、最優秀歌手を投票で選ぶ「テアター・オスカー」も「名誉オスカー」を含め計5回受賞。シーズン終わりに行われた劇場協会主催のお別れコンサート(ピアノ:服部容子)と最終オペラ公演では、別れを惜しむ満場の聴衆のスタンディングオベーションを受けた。
ヨーロッパデビューは1999年プラハ州立歌劇場での「椿姫」ジェルモン役。ハーゲン市立歌劇場、コットブス州立歌劇場、ツヴィッカウ市立歌劇場、ルードルシュタット市立劇場などドイツの劇場のみならずイタリア、スイス、オーストリアなどヨーロッパ各地で歌い、2006年夏はザルツブルク音楽祭の祝祭大劇場でのヘンツェ作曲「午後の曳航(原作:三島由紀夫)」に首領の役で出演、ベルリン・モルゲンポスト紙で「小森輝彦のバリトンは驚くべき存在感で傑出していた」と絶賛された。2009年には細川俊夫のオペラ「班女」でトリノとミラノにも客演している。
コンサート歌手としても、原田茂生、勝部太、中山悌一、ホッター、フィッシャー=ディースカウ、シフなどの薫陶を受けたドイツ・リートの分野での活躍は特にめざましく、日本、ドイツ各地でシューマン、ブラームス、ヴォルフ、R.シュトラウスなどの歌曲の夕べが聴衆の大きな支持を得ている。
二期会、新国立劇場、東京室内歌劇場などの公演で、現代作品を含め数多くの主役を務めている。2013年には新国立劇場「タンホイザー」、東京二期会「マクベス」「ホフマン物語」、宮城に於けるオペラ「遠い帆」他に出演予定。
東京芸大、同大学院、文化庁オペラ研修所、ベルリン芸術大学で学ぶ。五島記念文化財団オペラ新人賞受賞。第二回藤沢オペラコンクール第2位。ルクセンブルク国際声楽コンクール奨励賞。日本人初のドイツ宮廷歌手(Kammersänger)。二期会会員。東京音楽大学客員准教授。