全文を翻訳しました。東テューリンゲン新聞の記事です。
インタビューを含め、大きく取り上げられています。
テアター&フィルハーモニー・テューリンゲンの日本人アーティスト達が、イースターの月曜日にゲラで行われるチャリ ティーコンサートへ招待する。
取材:イローナ・ベルガー
ゲラ 「君たちはドイツにいて幸運だったと喜ぶべきだよ」小森輝彦氏は頻繁にこの台詞を聞かされることになっ た。このバリトン歌手は妻の登紀子さん、息子の健登君とゲラ市に住んでいる。「でも僕たちはここにいることを喜ぶ ことができません。当事者でないとわからない感情なのかも知れませんが。この大災害は我々にも大きなショックを与 えました・・・肉体的にではありませんが、精神的にです。」とこのオペラ歌手は語る。2000年から彼はここゲラの劇 場テアター&フィルハーモニー・テューリンゲンで専属歌手を務めている。
この怖ろしい地震と津波の二日の後に、小森家の人々はやっと家族と電話での連絡を取ることができた。東京の父親、 母親、兄弟、そして友人は皆無事だった。一安心することができた。正しい情報を得ようと、小森氏たちはインター ネットでの除法収集に多くの時間を費やすことになった。「僕たちはどこか、精神的な麻痺状態に陥っていたと思いま す。」壊れた川崎のコンサートホールの写真では、天井の音響版が客席に落下していた。不安がかき立てられる。小森輝 彦氏自身、このコンサートホールの舞台に立ってベートーベンの第九交響曲やヴェルディのレクイエムのソロで観客を魅 了してきた。このコンサートホールでは夏まで全てのコンサートがキャンセルされてしまった。 しかし音楽は生きることにとって掛け替えのないものだ。「今我が国では多くの人々が質の高い娯楽を求めているはず です。人々は魂的にも精神的にも救われるべきなのです」と妻の小森登紀子さんは話す。彼女は、息子の健登君が通うゲ ラのシュタイナー学校で授業をしている。
そして今、市立歌劇場ゆかりの日本人アーティストが三人、イースターの月曜日のチャリティーコンサートを発案した。 劇場のコンサートホールで「オペラの珠玉の数々」が聴けることになる。東京出身のバリトン小森輝彦氏はテノールのリ カルド・タムラ氏と共にプッチーニとヴェルディのオペラ「ドン・カルロ」「椿姫」「トスカ」「ラ・ボエーム」からア リアとデュエットを聴かせる。ピアノ伴奏は劇場のコレペティトアの長崎貴洋氏である。「劇場レストランのスツェナー リオも参加してくれます」と小森氏は喜んだ。飲み物の売り上げの50%が寄付される事になっている。 義援金の一部を受け取るのは、高い評価を受けている仙台フィルハーモニー管弦楽団で、避難所における演奏がサポート される。このオーケストラのアーティストたちはそのために「音楽による復興センター」という事業を立ち上げた。港町 の仙台は10メートルを超える津波に襲われ、文化施設も含めて甚大な被害を受けた。寄付の残りの部分は被災地の学校 へ楽器を調達するためなどに寄付される。
音楽が勇気と希望を与えうることを、長崎貴洋氏はよく知っている。彼は東京より西にある名古屋出身である。彼は二 年前からゲラの劇場でピアニストとして働いている。このチャリティーコンサートは彼にとって、被災者の力になるため の、もう一つの可能性なのだ。「私が故郷に飛んで戻っても、何の助けにもなりません。我々外国に住む日本人アーティ ストはこの地で何かをしなければならない」地震は慣れっこだ。地震が起こったときに自分を守り、冷静さを保つ事を 子供たちは既に学校生活の中で学ぶ。「すさまじい災害にもかかわらずパニックが起きなかったことは、我々の訓練の おかげだと思います」
「大災害が起こったらいつでも、僕は助けになりたいと思っています」とテノールのリカルド・タムラ氏は語る。「でも 今回は私は頭がおかしくなりそうだった。地震があった日に私はすぐに日本の総理大臣にメールを送りました。もし私 が何か助けることができたら連絡をくれと」そして「メールを受け取りました」と言う内容の返事が来た。「まぁ、政 府はこの大変なときに沢山やることがあるでしょうからね」と語る彼は、日本人の父を持つブラジル人の歌手である。 2008年にタムラ氏は初めて、彼の祖父の祖国を尋ねた。「私は名古屋とその近郊で、プッチーニの生誕150年にあたって 行われたコンサートで歌い、すぐに我が家にいる様な気持ちになったものです」最新の先端技術と伝統のハーモニー、 人々の謙虚さに、彼は強い感銘を受けた。 このオペラ歌手は注意深く福島の原子力発電所の事故の動向を追っていた。「地質学と物理学を学んだ者として私は、 他のエネルギー産出の可能性がない国における原子力発電の必要性を信じています。反面、地震の危険がある地域にお ける発電所の是非については考慮の余地があるでしょう」
この三人のアーティストたちはドイツのメディアの一面的な報道をいささか批判的に見ている。「話題がほとんど原発の 事だけに集中していますね。我々はドイツ人が原発というテーマに対して神経をとがらせていることを知っています。原 発からの離脱を望む人々の気持ちが、特定の政党の利己的な目的に利用されている様に思えます」
コンサートのチケットは10ユーロで劇場のチケット売り場で買うことができます。電話番号:0365-8279-105。 !チャリティーコンサート 4月25日 17時より ゲラ市立歌劇場にて
写真のキャプション
上の写真 ゲラの日本人アーティスト達が奮闘している。ダンサーの川端千帆さん、コレペティトアの長崎貴洋さん、ダンサーの渡 辺あみさん、バレエ・コレペティトアの片野-ドルシュ理子さん、トロンボーン奏者の諸岡育子さん、小森登紀子さん、 健登君、輝彦さん(左より) 写真:マルティン・ゲルラッハ
下の写真 希望のための音楽を:仙台フィルハーモニー管弦楽団のメンバーが先週、津波の被災者の避難所になっている石巻市の学 校の体育館で小さなコンサートを行った。写真:AFP
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