昨日の土曜日、ドン・ジョヴァンニのプレミエが無事終了しました。
テューリンゲン州全体のお祭りであるテューリンゲンタークが今年はゲラで行われて、それに併せてドン・ジョヴァンニのプレミエが行われたこともあり、大変な盛り上がりを見せました。
僕にとっては、ゲラでの初めてのプロダクションだし(リゴレットはアルテンブルクだったので)、何しろタイトル・ロールの責任は重大だし、ドイツでモーツァルトのこの有名なオペラをやるのだと言うことで、プレッシャーはかなりのものでしたが、本番は楽しんで演じることが出来ました。
お客さんの反応も非常に良くて、カーテンコールの最後は手拍...
子になって大騒ぎ。
今回のドン・ジョヴァンニは前にも書いたとおり、僕にとっての5回目のジョヴァンニ役だったのですが、色々な意味で新しい領域に踏み込むことが出来たと思っています。
詳しく書くと長くなるので、「僕の小さな森」の方にエッセイという形で書こうと思っています。
簡単に言うと一つは、役と自分の距離を縮めて演ずるということをしなくてはならなかったこととそれがかなりうまく行ったという自分の実感。
もう一つは、自分が今までの経験から得てきたジョヴァンニ役のための引き出し(解釈といっても良いでしょう)とかなり違う色の人物像を演出家から要求されたにもかかわらず、それに妥協するのではなく、その演出家の価値観の中で自分を生き生きと歌い演じさせるという事が出来たのではないかと言うことです。
フレキシブルにやると言うことだけでなくてね。
今日の日曜日にラジオで、そのプレミエの批評がでていたので聴いたのですが、「このプロダクションでのドン・ジョヴァンニはテルヒコ・コモリという日本人で、非常に美しい声に恵まれた歌手ではあるが、Daemonie(悪魔的であること)に欠ける」という様なことを言われていました。まさにここは一つのポイントで、僕にとってはジョヴァンニはまったく悪魔的(デモーニッシュ)なキャラクターではないので、そういう意味では正しく伝わっていたのでしょうかね。オランダ人やサロメもそうだけど、登場人物を怪物にしたがる人が多すぎると思うんですよね、僕は。
指揮は新音楽総監督のガブリエル・フェルツ氏でしたが、彼は本当に良かったと思う。これから自分のシェフとしての彼と引き続き仕事が出来ることは大きな喜びです。29歳とは思えない懐の深さだと思いました。
それから今日の日曜日は、そのお祭りにパレードで参加。プレミエを歌った翌日にこういう仕事もこなさなくてはいけないのが専属歌手の哀愁という気もしますが、意外に楽しかった。テレビ中継もありました。
2001年10月1日(月)スクリプトで読み込み