引越があと1ヶ月後に迫っています。
僕はもともと東京では結婚まではずっと実家に住んでいた人間なので、引越の経験は少ないです。小学生の頃に2回引っ越したけれど、その時は何も自分では考える必要はなかったし。
いや、それどころか、結婚後も2年弱は実家に住んでいました。だからとにかく自分のものがたまってたまって・・・。
それに比べると、うちの嫁さんはわりと引越を経験している人だし、多くのものを持たない主義なので、僕の生活態度が許せない部分があったようで、新婚の頃は結構怒られていました。
でも僕も留学するときに、短期留学のつもりはなかったし、一応自分のもので使うものはみんな持ってこなければならなかったし、かといって荷物が増えるとそれは即航空便の値段に反映されましたから、頑張って自分のものを削りました。これは結構大変な作業だった。もっとも昔のもので取っておきたいものは実家に残しておけたので、徹底的に自分のものをシェイプアップしたことにはならなかった部分もありましたが。
ベルリンで4年強、ある程度自分の持ち物を限る、という生活態度でやってきた結果、僕もものを多く持たないことのメリットや快感(・・・気持ちよさ、かな?)がわかってきました。まぁ嫁さんの指導のたまものなんだけど、まぁ自分もこの指向を好むようになりました。
ベルリンからゲラへの引越はちょっと複雑な経路をたどったので、今ひとつ普通の引越とはいえませんでしたね。ベルリン生活とゲラ生活の間に半年の東京生活が入ったし、その時に長男の誕生というイベントがあったので。
半年居るだけの東京生活とはいえ、その半年で歌うものの楽譜や録音関係の機械やコンピュータなど日常的に使うものは日本に持って行かねばならないし、そうでないものは半年間の保管期間に耐えられる形で段ボールに詰めてベルリンの僕らの住居に(僕らのあとにその家に入ってくれた人が置かせてくれることになったので)置いておき、東京からゲラに行く途中によって、寮生活で必要なものをその中からピックアップできるように段ボールの山の上の方に別にして置かねばならなかったし。なかなか面倒でした。
それが今回の引越は、ゲラ市内での引越だし、単純な移動(三角形などでなくて直線移動ということで)なので、そういう意味ではセオリーを押さえておけば大丈夫な引越ではあります。
とはいえ、子供を抱えての初めての引越なので、そういう意味での緊張はあります。
もう一つ今回初めてやらなければいけないのは、古い住居の修繕です。
これはドイツでは全く普通のことなんですが、僕らは初体験です。
掃除だけではなく、釘の穴を埋めたり、傷を直してペンキ塗り。場合によっては壁紙をはがして張り替えることが必要になることもあります。ベルリンの住居は、大家さんがとても親切な人で、しかもこういう大工仕事を好んでやる人だったので、大家さんが全部やってくれたのです。
今住んでいる家は隣の建物に誰も住んでいないので、そちら側の壁がすごく冷たくなるのです。特に冬は本当に冷たくて結露してしまいます。それに加えてベランダに屋根がないし、建物の中に洗濯物乾燥用の部屋があるわけでもないので(建物によっては地下などに干し物用の部屋があります)、家の中で干すしかない。換気をいくらまめにやっても、結露は避けられませんでした。そしてもちろんカビがはえるわけです。その壁がもっと断熱材を入れてしっかりと工事されていれば、隣が無人の建物でもこうはならないわけです。
これがまさに引っ越すことを決意した理由の一つなのですが。
このカビを除去して、ペンキを塗り直すのが今回の引越の作業の目玉の一つ。もうペンキは買って、少し試したりはしました。色が合わないと壁という壁を全部塗り直す結果になりますもんね。
ドイツ人の友人のアドヴァイスは貴重でした。「とにかくいっちばん安いペンキを買えよ。大家が自分の住むわけでもない家に高いペンキを使う訳ないんだから。一部だけ塗り直して色を合わせたかったら、とにかく安い色を買え!」
全くその通りで、ペンキ売場で余り目に付かないところに置いてあった、他のペンキの半額以下の安いやつを買ったら色はばっちり合いました。
壁にねじやくぎを打ったところを埋めるパテや、ドアなどの木の部分用のラッカーなども買ってあります。
引越の決行日は4月22日。もう業者も予約して、劇場にも休暇願は出してあります。4月一杯は家賃を払っているので、4月30日までに修繕を終えて鍵を返さねばなりません。問題は、ルチアの立ち稽古が始まっている引越後の1週間で、はたしてこの作業が終えられるかどうか・・・。ルチアはシングルキャストだからなぁ・・・。
(2002.3.20)