スカート

スカートってね、女の人がはく、あれじゃありません。カードゲームです。ドイツとフランスで主に広まっているようですが、ちょっと事情があって、このゲームのカードを今日買ってきました。

というのは、僕が7月に東京で歌う「インテルメッツォ」というオペラに、このスカートをやるシーンがあるのです。この「インテルメッツォ」を作曲した、僕が最も敬愛するオペラ作曲家であるところのR.シュトラウスは、このスカートにかなりのめり込んでいたようです。
指揮者としても活躍していたR.シュトラウスが、早く公演後に仲間とスカートをしたいが為に、速いテンポで指揮して公演を予定よりも早く終わらせ...


た、なんてエピソードもあるくらいですから、相当凝っていたと思います。
で、僕が演じるロベルト・シュトルヒという役は、リヒャルト・シュトラウス本人なのです。名前も似てますよね。この「インテルメッツォ」のお話しはR.シュトラウスの家庭に起こった事実を元にかかれていまして、そういうわけでR.シュトラウスが好んだスカートもオペラの中に出てくるわけです。

偶然ですが、僕が歌っている劇場があるアルテンブルクは、このスカート発祥の地なのです。この間、5月のあたまにスカート・フェスティバルがありました。発祥の地なので、ドイツ・スカート連盟なんてものもあるらしく、どこにあるのか聞いてみたら劇場の裏にあるというので、今日行ってきました。

写真はスカートのカードやルールの教本などとそのスカート連盟の事務所。

日本人がスカートを覚えようとしていると知ると、親切にいろいろ教えてくれました。でも、ルールは相当複雑らしくて、すぐには覚えられそうもありません。「インテルメッツォ」の立ち稽古までには何とか習得しておきたいものです。
でも、「インテルメッツォ」のせりふの中で、楽譜にあるせりふと、録音で実際に話されている言葉が若干違うところがあったのですが、ゲームの中で通例としてはどう言うか、という事などを今日聞いたら納得がいきました。こんな情報、東京じゃとても入らないでしょうからね。ラッキーです。

この「インテルメッツォ」ですが、やはりR.シュトラウスの音楽ですから、難しいんですけど、このオペラの最大の特徴は、ほとんど会話調で歌われるという事ですね。R.シュトラウスのオペラにおいては言葉というのは本当に大事なんだけど、この「インテルメッツォ」ほど、言葉の感覚が重要な作品はないかもしれませんね。
内容はおおざっぱに言うと、宮廷楽士長のロベルト・シュトルヒ氏の夫婦間のもめ事で、ある女性が間違いで出した手紙がきっかけで大きな誤解が生じて、奥さんは公証人のところに離婚の手続きのために行くというところまで行くのですが、最後には誤解が解けてめでたしめでたし、というお話。あらすじをがんばって書いてサイトにも載せます。約束したもんね。

で、奥さんの「あなたの不実が証明されました。あなたとはもう永久に別れます。」という怒りの電報をロベルトが受け取る場面が、スカート・ゲームの場面なのです。ロベルトが稽古の後に知人とスカートを楽しんでいるところにこの電報が届きます。
また、このシーンがとにかく会話、会話、会話でして、本当に勉強するのが大変なシーンです。スカートをしているメンバーの一人、宮廷歌手が途中で「おい、僕らはスカートをするために集まったのか、それともおしゃべりをするために集まったのか?!」と怒り出すほど、おしゃべりの方も花が咲くのですが、歌の間にたくさんせりふも入ってきて、この上にスカートのゲームをする芝居をしながら・・・と考えると気が遠くなってきます。

このシーンの音楽には、じつは音楽ギャグがたくさん隠されていて、とても楽しいです。たとえば宮廷歌手が、稽古が長引いておくれてきたロベルトに対して「まったく毎シーズンはじめはそうやって一生懸命稽古しちゃって。3月にもなるとすっかり飽きるのに」とからかうところのオーケストラ伴奏に、全く違う調性で「フィガロの結婚」の序曲のはじめのパッセージが入ってきます。これに気づいた人は「ははぁ、ロベルトが稽古をつけていたのは『フィガロの結婚』なんだな」とわかるわけです。でも、ちょっと一度聞いただけじゃわからないんじゃないかと思いますね、ここは。
それからロベルトが「音楽の後のスカートは最高だ!」というところの、「音楽の後」の部分の和声が、「トリスタンとイゾルデ」の序曲の冒頭に出てくるいわゆる「憧れの動機」で、ロベルトが最近指揮した本番がこの「トリスタンとイゾルデ」だったのかな?なんて思わせます。
まだまだ他にもあるかもしれない。さらいながら探してみますね。
2004年5月14日(金)スクリプトで読み込み

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