今日は、サントリーホールでモーツァルトの「レクイエム」の本番でした。レクイエムというのは死者のための鎮魂歌ですね。日本フィルハーモニー交響楽団の皆さんとご一緒させて頂くのは8月の第九に続いて2度目です。指揮の沼尻さんとは今回初めてご一緒させて頂きました。他のソリストは、ソプラノが天羽明恵さん、メッツォが永井和子さん、テノールが永田峰雄さん。テノールの永田さんとも初共演です。数年前にローマでのオーディションでお会いして面識はあったのですが。
このモーツァルトのレクイエムのソロは、僕にとっては少し低い、本来バスのパートですが、素晴らしい作品だしとても楽しみにしていました。指揮の沼尻さんは、去年僕が東京で歌ったオペラ「インテルメッツォ」を聴いて下さって、それ以来お話し頂いた中でスケジュール的に実現したのが今回の演奏会でしたので、やっと実現した沼尻さんとの共演もとても楽しみでした。
公式サイトだし、あんまりプライベートな方に引っ張るのもなんだけど、やっぱりこういう作品を歌うとなると父のことを考えずにはおれません。もう3週間経ったんですが、本番中もずっと父のことを考えていました。まぁ考えないようにするのも無理だし、不自然ですよね。だから良いと思う、と割り切りました。はい。
沼尻さんとソリストの皆さんにも一応、父のことはお話ししました。ふれて回るようなことでもないけど、黙っているのもなんだか根暗な感じがするし、大体ホームページで報告していることですしね。お客様にレクイエムをお届けするのが今日の僕たちの仕事だけど、そんなわけで共演者の皆さんがほんのちょっとは僕の父に想いを馳せて下さった事がプロフェッショナルとしての仕事から離れることではないと思ったので。
父は派手なことが好きだったので、あんなきれいなホールで、1000人以上の人が一緒のところで、あんな素晴らしい音楽を贈ってもらえた事は絶対嬉しかったと思う。ソリストの出番はベネディクトゥスで終わり、自分の出番が終わってほっとしたこともあるのですが、その後の合唱とオーケストラの皆さんの演奏を聴きながら、「あー、これは親父は喜んでるだろうなぁ」としみじみ思っていたら泣けてきてしまった。まぁ歌は終わっていたし、出番の終わったソリストが一人くらいうるうるしていても気づいた人はいないと思うので、まぁ勘弁してやって下さい。
今日は終演後に高校のサッカー部の同期のM氏夫妻と食事することになっていたので、合唱の皆さんから打ち上げに誘って頂いたのに行けなかった。ごめんなさいー。M氏夫妻と別れたあとに打ち上げ会場に向かってみたのだが、途中でオケの方とすれ違って「もう打ち上げ終わりましたー」とうかがったのであきらめて帰りました。
ずっと合唱や僕らと歌いながら指揮をして下さった沼尻さん、日本フィルの皆さん、そしてソリストの皆さん、本当に素晴らしい演奏をありがとうございました。特に印象深かったのは、日本フィルハーモニー合唱団の皆さん、素晴らしかったです。入魂の演奏、という感じでした。練習で出されていた沼尻さんからの数々の厳しい要求に本番ではばっちり応えて演奏されていました。また是非ご一緒したいです。
父が亡くなったあと、初めてのオーケストラとの仕事がレクイエムだったというのも偶然じゃない気がしてきます。今日、僕と一緒にレクイエムして下さった全ての方に、心からありがとう。