今日のジェルモンは急遽僕が歌うことに

僕はゲラのプレミエでジェルモン役を歌っているので、今回のアルテンブルクでのプレミエではダブルキャストの同僚バリトンにジェルモンを譲ることになっていました。これは一応規則というか、そういう取り決めになっているんですね。
で、僕はこの同僚が当初キャスティングされていたドビニー侯爵の役を、彼がジェルモンを歌うときは歌うことになっているわけです。


ところがこの同僚、本来はバスバリトンで、僕と「さまよえるオランダ人」の時もダブルキャストを組んだ人です。ジェルモンというのはバリトンにとっても高い役で、普通に考えればバスバリトンが歌う役じゃないんですね。彼にとっては当然きつい。
すごくコクのある良い声なんだけど、それぞれ自分の音域があるというのは仕方のないことで、僕がテノールの役を歌えないのと同じ事です。
でも、今までは彼の希望もあって何とか歌ってきたんだけど、ここに来てもうどうにもきつくてGPでも声が破綻したりして、ちょうど聴きに来ていたインテンダントの鶴の一声で「明日のプレミエは小森氏と交代して下さい」と言うことになった。うむむ。予定が狂った。
日本でも似た様なケースはある(あった)のですが、ここゲラでのこの決断の早さというか、結果を重んじる現実主義の態度を見て、日本人とドイツ人のメンタリティーの違いをあからさまに見る思いでした。日本でのケースでは、やはり交代すると言うことにはなかなかならないのです。これはオペラというものが置かれている状況が日本とドイツで違うと言うことも大きな要素ですが、やはりメンタリティーの違いでしょうかね。
今日の本番はドビニー侯爵だと思って、その前にヴァネッサの暗譜でもしようと思っていたので、予定が狂った。しかも昨日はリサイタルでバリバリ歌っちゃったし。でもジェルモンは僕にとっては歌いやすい役でもありますし、やはり音楽が美しいので、もちろんやる気は出ますね。
アルテンブルクに場所を移して、劇場の寸法が違うので、舞台上の動線がかなり違ってくるのを計算に入れて今日は芝居しないと行けません。また、昨日のGPで同僚の方のテンポになれてしまったオーケストラをうまく僕のテンポに乗せていかないといけないのでこれは注意が必要。アリアと、2幕2場のソロの部分では、同僚バリトンと僕ではかなりテンポが違うのです。オーケストラの人も聞いてくれていると思うけど、指揮者と話すのは勿論のこと、コンサートミストレスの人とも話しておいた方が良いかも知れないですね。早めに劇場に入ろう。

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