明日はうちの劇場のオーケストラの定期演奏会。
シューベルトの交響曲8番とドヴォルザークの交響詩とともに、僕の歌うマーラー「さすらう若人の歌」がプログラミングされていて、それに関するインタビュー記事も今日の新聞に出ました。僕としては大好きなこの歌曲集をドイツで初めて歌うのも楽しみだし、新しい音楽総監督との最初の音楽会です。
ところで、今日はちょっと朝から怒っておりました。
何かというと、本来二つしかはいるべきでない稽古が四つも入っていたのです。昨日は稽古予定を遅くに見たので、これに気がついたときはもう事務所は閉まっていて、文句をいうことができなかった。しかもその中の一つはマーラー「さすらう若人の歌」のオケあわせです。Vanessaの立ち稽古の前に制作担当のところに怒鳴り込むところから一日が始まりました。
どういう稽古日程になっていたかというと、まず朝の10時から14時まで、オペラ「Vanessa」の立ち稽古。14時からオペラ部門の総会というか、会議。15時から別の場所にあるオケの稽古場でマーラーのオケあわせ。18時からまた「Vanessa」の立ち稽古。
つまりね、あのめちゃくちゃ高くて難しい「さすらう若人の歌」のオケあわせの前に4時間立ち稽古をやって、1時間会議をやってそのまんまオケあわせにいけ、という稽古日程で、しかも移動の時間も昼ご飯の時間も取れない。
この曲は本当に音域が高くて、テノールの音域といってもおかしくない様な音域で、しかも多くの弱声を要求される、技術的にはむちゃくちゃ大変な曲なんです。そのオケあわせのまえにウォーミングアップの時間も取れない。だいたいそのオケあわせまで6時間働きっぱなしじゃないですか。
本来は一日に入れて良い稽古は二枠までで、しかも間の休憩時間は4時間無くてはいけない、というのが規則なのです。ソリストは立場的に弱いので、それでも3つ稽古を入れられてしまうことがたびたびある。そういうときは3つめの稽古に対して残業手当的なものがでるべきなんだけど、まぁうちの劇場は貧乏なこともあり、みんな泣き寝入りしております。
でもね、これじゃ明日のコンサートをまともなコンディションで歌えませんからね。もう。本当に頭に来るなぁ。
で、制作に文句を言って、オペラ部門総会は欠席することでまず合意してそれをインテンダントに伝えてもらった。
で、Vanessaの立ち稽古の前に、演出家と演出助手にも文句を言ったら、立ち稽古は少し早めに切り上げてもらえることになった。でもちょうど僕が中心になって動かす幕なので、僕なしでは出来ない幕なので、稽古自体をとってもらえないのは僕も仕方ないと思う。
話を聞くと前もって音楽監督と演出家で僕が3つ稽古にでなくてはならなくなるのは確認済みだとか言う。だったら前もって言って欲しいなぁ。ぶつぶつ。
結局減らしたとはいえ夜も3時間以上立ち稽古やったし、普通に考えてコンサートの前日の状況じゃないですよね。僕が調子を崩したり、疲れた状態でこの曲を歌って破綻したりしたら劇場としても傷だと思うんだけどね。
ともあれ、オケあわせは何とか無事に済ませました。オケの人からも沢山拍手もらって、評判は良いようです。明日が楽しみです。明日はコンサートのGPと本番だけだから。
実はこの曲、息子の健登が生まれたその日に歌った曲なのです。2005年の4月30日。東京都交響楽団の、今は亡きガリー・ベルティーニ氏とのマーラー全曲演奏会の第一回で、横浜のみなとみらいでした。これがマチネだったので、僕は健登の誕生には立ち会ったもののだっこできずにすぐに横浜に発ったのです。
今日でた記事のインタビューでもこの話をしたからか、記事の見出しが「Kento lauscht im Saal(健登もホールで聴いている)」になってしまった。今回は嫁さんと健登で、コンサートの前半だけでもライブで聴く、という事になっているのです。
前に歌ったときより、僕の技術も向上しているし、音楽的にも余裕が出来ているから、自分的には満足度はかなり上がりました。
前にやったときと比べて、感覚的に面白いなぁと思ったのは、この劇場のオーケストラとも6年目ですから、例えばティンパニが遅れると、ティンパニの人の顔がパッと浮かぶし、チェロがつんのめると、チョロのトップの顔がすぐ浮かぶ。本当にアンサンブルやりなれた仲間と音楽するという感じになってきました。嬉しいことです。