お祈り

僕の誕生日にエッグ・ウォーマーをくれたGötz家の皆さんですが、もう一つ後からプレゼントをくれました。


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それは、クリスティアン・モルゲンシュテルンの詩集です。この詩集の最初の方に「Dr.ルドルフ・シュタイナーのために」とあることからもわかりますが、モルゲンシュテルンはシュタイナーと深い結びつきがある詩人でした。


Götz家の特にジャネットは、かなり人智学に深くはまっている人で、僕にとっては人智学の話をかなり深いところで出来る、少ない友人です。僕にとって大変貴重な存在です。彼女がこの詩集を探してきてくれたんだけど、これ、なかなか手に入れるのが大変だったようです。嬉しいプレゼントです。
 
ドイツ歌曲として作曲された彼の詩で僕が知っているのは、R.シュトラウスの作曲による「Leise Lieder」作品41-3くらいだけど、他にもヒンデミットなどによって作曲されたものもあるようです。
 
幼稚園から健登が持ち帰った、お祈りというか、食事の前に「いただきます」がわりにいう詩があります。うちではここ数年、これを食事の前に言っているのだけど、これもモルゲンシュテルンの詩だという事です。この本には載っていなかったんですけどね。
うちによく遊びに来る人、うちで食事を一緒にした人は、このお祈りを一緒に言わされています。
 
Erde, die uns dies gebracht,
Sonne, die es reif gemacht.
Liebe Sonne, liebe Erde,
euer nie vergessen werde.
(Gesegnete Mahlzeit)
 
最後の一行は詩に含まれると言うより、「いただきます」みたいなもんだと思いますが。
簡単に訳すとこんな感じ。
 
これらを我々にもたらした大地、
これらを豊かにした太陽。
愛しき太陽よ、愛しき大地よ、
あなた達のことを決して忘れませんよ
(この食事に祝福あれ)
 
短いけどね、良い詩でしょう。
 
もう何ヶ月か前だけど、ゲラのキリスト者共同体の牧師さんの奥さんに、シュタイナー自身が書いたお祈り(Spruch)の本をいただいたんです。この奥さんは小学校設立運動の中心になっている人で、僕とともに東テューリンゲン・ヴァルドルフ教育協会の理事だから、僕とはかなり密に関わりがある人なんだけど、いつだったか急にこれをプレゼントしてくれたんです。
食事前のお祈りも、このモルゲンシュテルンの詩を何年も言っていて、他のも探そうと思っていましたので、まず食事前のお祈りのところをめくってみたら、これまた素敵なのがありましてね。何度か言ったけど、ここのところまた言っていないなぁ。これもちょっとのせてみましょう。
 
Tischgebet
 
Es keimen die Pflanzen in der Erdennacht
Es sprossen die Kräuter durch der Luft Gewalt
Es reifen die Früchte durch der Sonne Macht
 
So keimet die Seele in des Herzens Schrein
So sprosset des Geistes Macht im Licht der Welt
So reifet des Menschen Kraft in Gottes Schein
 
詩を訳すのって難しいのですが、頑張って訳してみます。
 
食事の祈り
 
植物が、大地の夜に芽を出す
薬草が、大気の力で芽を吹く
果実が、太陽の力で熟す
 
そのように、心の祠(ほこら)に魂が芽を出す
そのように、世界の光の中に、霊の力が芽を吹く
そのように、人間の力が、神の輝きの中で熟す
 
やっぱり難しいなぁ。「力」と訳してある言葉だけで、3種類のドイツ語が使われているんですよね。Macht, Gewalt, Kraftですが、もちろんそれぞれ意味が微妙に違うわけです。Machtは普通に「力」と訳せるけど、権力の意味もある。Gewaltは暴力、猛威みたいな意味もある。Kraftというのは、能力とかエネルギーみたいなニュアンスが強い。シュタイナー教育で「生命力」という意味で使われるのはLebenskraftですしね。
 
ドイツ語を日本語に置き換えるのは難しいです。ほんと。
夏のデュオ・リサイタルで、服部容子さんと一緒に演奏するブラームスの歌曲集「美しきマゲローネ」を演奏するわけですが、いま、その朗読用の台本を、この忙しい合間を縫って作成しているのであります。
この歌曲集、もともとはハーレクインロマンスみたいな軽い感じのラブ・ストーリーだった(と僕は思っている)ティークの「美しきマゲローネ」が、ブラームスの音楽の力である種哲学的な力を得て、素晴らしい歌曲集になっています。で、結構長いし、全部を読んでもらうわけに行かないので、色々なCDなどを参考に、カットをしなければいけません。これが大体難しい。
 
で、日本語の訳は一から作っているんですよ。大胆な試みだ。
気に入っているバージョンを見つけて、それを聞いて聞いて、耳から入った音から訳しているんです、今回は。テーブルで原稿から訳した方が普通なんだろうけどね。でも、他のバージョンも聞くと「ああ、この部分はやっぱり入れたいなぁ」とか出てきてね。
で、やっぱり直接のニュアンスを持ち込みたいところもたくさんあるんだけど、そうすると日本語では全く意味不明になったりするんですね・・・。
 
今回のデュオ・リサイタルでは、何が何でも、「若い」ペーター伯爵(マゲローネに恋する主人公)にしたいのです。で、今手に入る訳を見ると、どれも古くさいし、日本語の朗読を入れた演奏会やCDもあったんだけど、これも朗読の方が決して若い方ではなくて、なんだか若々しさ、張りつめた切なさみたいなのが全然感じられないわけです。これじゃこの歌曲集の魅力が半減なわけで。
だから、僕が「若々しい」台本を、自分で作ろうと、日夜頑張っているわけです。「コシ・ファン・トゥッテ」の稽古と本番でぎちぎちのなか、無理矢理時間を作ってやっております。
朗読もですね、めちゃくちゃ若々しさに充ち満ちた方にお願いしております。早く皆さんにお知らせしたいんだけど、まだ出来ないんですよー。ごめんなさい。もうちょっと待ってくださいね。色々と事情がありまして。夏の他の二つのコンサートはチケット発売開始したんだけど、この肝心のデュオ・リサイタルだけ、まだなんですよね・・・。でももうすぐです。5月にはなっちゃうと思いますが。

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