一昨日の日記で書いた、このBauernhofkonzert(農家でのコンサート)ですが、今日が本番でした。始めよい天気だったのにだんだん雲行きが怪しくなってきて、僕の「Stars」が終わった途端に雨が降り出し、約20分の中断後、幾つかプログラムをカットして続行しました。オーケストラの労働条件の関係で5時には終えなくてはいけなかったからですが。
盛況だったし、なかなか楽しかったです。土曜だったし、うちは家族3人で出かけました。
ゲラから30kmほど離れたWürchwitzにある会場に着くと、トラクターが舞台装置の一部になっている。よく見ると、オーケストラの上に布を張って屋根にしているんですが、これを左右のトラクターが引っ張っているんですわ。うまい演出だ。農家コンサートならではですね。
今日の指揮は、トーマス・ヴィックライン。司会・解説もするのですが、こういうものをさばかせたら本当に彼以上にうまくやる人はいないと思う。話がうまいし、彼自身がピアノも達者でアレンジが出来るので、こういうポピュラーなものもやるコンサートでは彼に任せておけば全く心配なし、という感じ。僕の歌った「Stars」も今日はキーボードがないし、編成が違うのでオーケストラ・バージョンをわざわざ用意してくれました。
今日は、最初は天気は良かったんだけど、風がえらく強かった。この写真見てください。楽譜を洗濯ばさみで抑えてるんですよ、笑えるでしょ。でも、せめて木の洗濯ばさみとかにすれば良かったのに、こんなプラスチックの色とりどりなヤツを・・・。上の写真のトーマスも、丁度楽譜の重しにする石を捜していたところでした。色々苦労があるのね。
この写真は練習ですが、ヤクザみたいな衣装でポケットに手を突っ込んで歌っている歌手と、アロハみたいなシャツを着てサングラスをかけて弾いているコンマスとどっちの方がガラ悪いでしょうか?
後で気がついたんだけど、この人、「マトリックス」のSmithに似てるんだよ。結構二枚目なんだけどね。今シーズンからうちのコンマスになりました。大学出たてで23歳とかですよ。でも、オケが満場一致でコンマスを決めた事なんて今回が初めてだそうです。本当に上手ですよ。今日はメリー・ウィドウ・ワルツが雨のせいでカットされてしまって、前奏の彼のソロを聴き損ねてしまった。
このWürchwitzと言う村は、Milbenkäseで有名な場所だそうです。Milbeってね、ダニです。この白い像はダニの記念碑だそうで・・・。ダニを使ってチーズを作るのです。他のところでこのダニ・チーズを食べた事あるけど、味は大変美味ですよ。
ダニの像を見て戻ると、開演時刻も迫っていて、たくさん人が集まっています。村中から人が集まっている感じでしたね。
前半が終わって休憩の後、この農家の女将さんへのインタビューとか、アルテンブルク農家連盟の理事の人とかのインタビューがありました。この写真はその理事の方が、この土地のTracht(民族衣装)をご自分と、お子さんに着せて登場されてました。子供の衣装もかわいかったですよ〜。大喝采でした。関係ないけど、この農家連盟の理事の方、ドクターの称号を持っていたけど、ものすごくきれいなドイツ語で話される方で、ちょっと驚きました。Thüringisch(テューリンゲン訛り)は全く聞かれなかった。きれいな言葉が話されるのを聞くのは心地よいことですね〜。いや、訛りはもちろん文化の一部だし、特有の美しさもあるけど、この人のドイツ語は「美しかった」んですよね。うーん。よかった。
僕が「Stars」を歌う前、トーマスの司会が「ドイツの農家で、日本人バリトンの小森氏が、フランスのミュージカルを英語のオリジナルで歌います」と言ったら、みんな大爆笑。僕も実はトラクターの後ろで大声で笑ってしまった。他に可笑しかったのは、ソプラノが「ドン・ジョヴァンニ」のツェルリーナの「ぶってよマゼット」を歌うときに、筋の説明はした後「未成年保護のため、イタリア語で歌います」で、また爆笑。そのあと、僕がやはりドン・ジョヴァンニの「シャンパンの歌」を歌う前は「アルコール中毒者保護のため、イタリア語で歌います」ってね。また爆笑。
で、「Stars」ですが、歌ったらね、最後のロングトーンを延ばしているときに急にぶわーっとすごい風が吹いてきて、屋根が飛びそうになってました。お客さんの髪の毛も逆立っているし(感動したからか?)。この写真は動画から切り出したので不鮮明ですけど、屋根の布がすごいことになってるでしょ。で、この後、ざーっと雨が降り始めました。
この写真は、中断後に最後のナンバーを演奏しているところだけど、一応雨は上がっても屋根から少したれたりするので、大きい傘を持っている人に集まってもらってオケの楽器を守ってもらっている図です。何だか笑えません、これ?まぁ楽器の持ち主にとっては笑える話じゃないんでしょうけどね。