Les Misérableの最終公演・・・追記あり


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我が劇場のヒットプロダクション「Les Misérable(レ・ミゼラブル・・・ああ無情)」の最終公演に行ってきました。実はまだ来シーズンも公演があるだろうから来シーズン見ればいいや、と思っていたのですが、毎日e-mailで届くProbenplan(稽古予定)に最終公演と書いてあったのであわてて行くことにした次第。売り切れになることが多かったので、チケットが残っていてラッキーでした。
このミュージカルは有名だし、日本でも繰り返し公演されていますね。僕も何度も見ました。帝国劇場でも何度か見たし、ロンドンでも見たし。僕が大好きな山本耕史さんのデビュー作品と言うことで、彼に登場してもらった一昨年のデュオ・リサイタルではこのレミゼから警察官ジャヴェールのナンバー「Stars」をアンコールで歌いましたっけ。


作品自体が良くできているから、これだけ世界中でヒットしているわけですが、やっぱり今回もそれは感じましたね。観客の興奮をあおるようにうまくできていると思う。かくいう僕もすっかりあおられて、おいおい泣いてきました。

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このミュージカル、やっぱりジャン・ヴァルジャン、ジャヴェール、マリウスなどの主役陣が良くないとうまくいかないんですけど、実はすごく大事なのはアンジョルラスだと思いますねー。ロンドンで見たときのアンジョルラスが格好良くて歌も抜群で、マリウスを喰ってるなーと思うんだけど、結局喰わないというか、マリウスの売りは別だから、アンジョルラスがいくら格好良くてもはバランスを崩すことなく作品全体にちゃんと貢献するんですよね。
僕がロンドンで見たときのアンジョルラスはウエストサイド物語のトニーとかそういう主役をばんばん歌っている人で、マリウスも歌ったことあるみたいだけど、ある種の女々しさがないとしっくり来ないマリウスよりもアンジョルラスが合うんだと思います。
今回もそうでした。歌は万全とは言えなかったかも知れないけどえらく格好良かった。あの有名なアンサンブル(日本語の歌詞は「戦うものの歌が聞こえるか」ってやつ)の最初を歌い出したところなんか、もう最高でしたね。すごく声を落として始めたのがすごく効果的だった。ここはピアノの指示があるんだろうと想像するけど、音量は落ちていても音色的に効果的なピアノになっていない人が多い中、昨日の彼はぞくぞくしました。
切ないんですよね、この作品は。青春の象徴みたいなもんなんだと思います。そこに観客は自分の青春を重ねて感動したりすると思う。バリケードで全滅してしまう事を知っていると、このカフェでの彼らの情熱はえらく切ない。見ながらふと「そうか!こいつらは新選組なんだ!」と思ってしまった。新選組もそうなんですよね。勝ち目のない戦いに、愚直なまでに自分の信念を信じて向かってゆく。

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ここでこうひらめいたからか、全く関係ないのにバリケードのところで本格的な戦闘になって味方がどんどん撃たれていくところで、思わず「源さぁーんんん!!」と叫びたくなってしまった。事情がわからない方、訳わからなくてすいません。この辺は誠ネタです。カーテンコールなら差し支えないかと思うので写真とってみました。
山本耕史さん、ガヴローシュでデビューしてその後マリウスも歌われたわけですが、アンジョルラスで一度みたいなぁ。土方的にはアンジョルラスじゃないだろうか。甘さがあってそれでいて男気もある、というところではマリウスがもちろんはまるわけですがアンジョルラスも良いと思うなぁ。
 

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といいながらも、やっぱりジャン・ヴァルジャン、大事です。そして昨日のヴァルジャンのアンスガー・シェーファーさん。素晴らしかった。もうこの人が燭台盗んだあたりで、既に感動していました。この役をこういうまっすぐに歌い演じられる人が歌ってくれるだけで、もうすごいことだと思う。声楽的にも芝居的にもかなり大変な役だから、どうしてもごまかされちゃうことが多くて、ソロのBring him homeもしっかり歌い抜いてくれる人はほとんどいない。裏声で別に良いと思うんだけど、それでも歌い抜いてくれないとすごく欲求不満になります。でも彼のBring him home・・・Bring ihn heimだったけど・・・は本当に良かった。
あとマリウスのマルコ・ファーラントさん。若々しくて芝居も歌もバランスとれていて素晴らしい。歌だけとったら彼が一番だったかもしれない。貫禄とか存在感でヴァルジャン役がやっぱりぬきんでているけど、これは役のせいもあるからね。マリウスは甘さが必要と書いたけど、やっぱり男っぽくないと、彼が生き残って自責の念に駆られるソロナンバーが全然生きてこない。台詞にもあるけど、堅物の彼が恋をした、ということが非日常、というかいつもの事じゃない、ということが見えてくると良いですね。あまいだけだと、いつも恋している青年みたいに見えかねない。
ヴァルジャンが自分を救ってくれたと知って、「俺はなんて馬鹿なんだ」という時に、自分に怒っている暴力性みたいなのが見えてぐっと来たです。
 
女性陣も良かったですよ。コゼットも良かったし、エポニーヌも。フォンテーヌを歌った人がダブルでエポニーヌも歌っているので、そっちのキャスティングでも見たかったなぁ・・・。
 
エポニーヌはでも、帝国劇場で見た島田歌穂さんの上を行く人に会うのは至難の業ですね。記憶に間違いがなければあの方、On my ownをほとんど直立不動で歌っていたと思う。まぁ演出は世界中でやられているジョン・ケアードのものだけど、所作の控えめさをもって歌の力を最大限に引き出すという点で、歌役者のお手本みたいな方です。心から尊敬してます。
 
これらの役はみんなオーディションで選ばれた客演の歌手で、うちの専属からは若いバリトンのセルシュ君がジャヴェールを、テナルディエ夫妻をギュンターとアンゲリカのコンビが歌っていたな。
同僚のことはあまり悪く書きたくないけど、オペラ歌手がミュージカルの舞台に立つと、身のこなしの違いがすごく目立ちますね・・・。それでいて、オケもそうだけどミュージカルだとオペラほど旋律を歌いきる気がないのか、メロディー的にも歌い回しがえらく中途半端ですごく欲求不満になります。ギュンターとアンゲリカはもうこういうのは手慣れたもので見事なものでしたが、ジャヴェールがなぁ・・・。大事な役ですからね、やっぱり。スターズは自分も好きな歌だし、うずうずしてしまった。良い声なんですけどね、すごく。今は彼は「セヴィリアの理髪師」の稽古に忙しくしているところでしょう。オテロのヤーゴもカバーみたいな立場で歌うという話もあったけど、自分で楽譜を見てまだ自分には早いと判断したそうです。
 
よっぽど終演後にヴァルジャンのシェーファーさんだけにでも握手してもらおうかと思ったけど、やめておきました。こんなに良い舞台なんだったらもっと何度も見たかった。残念。せっかく自宅から2分のところに劇場があるんだから、もっと他の演目も見なくちゃなぁと思うんですが、やっぱり自分が舞台に立つことが多いと、なかなかそう言う気になれなくて。気持ちをオフにしたくなるんです。でも、客席に座ることでしかわからないことは本当に多くて、今回も非常に多くを学びました。レミゼの出演者の皆さん、ありがとう。そしてお疲れ様でした!
・・・追記
スターズは一昨年のデュオリサイタルのアンコールだったんですが、3回連続でミュージカルナンバーだったアンコール、今年のデュオリサイタルではちょっと新機軸かも知れないですよ。うふふ。まだ本決まりじゃないけど。
本プログラムとは別の雰囲気で、親しみやすい曲をアンコールに、という方針はもちろん変わってないです。お楽しみに〜

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