リゴレットはキャンセル

今日のリゴレットは結局キャンセルしてしまいました。咳がどうしても止まらなくて、冷静に考えると歌える状態じゃないですね。熱などの他の症状がないので、何だか自分が病気だと思いにくいんですが、歌えなくては歌手としてはどうしようもないですよね。ううう。
今まで本番をキャンセルしたことがないので、何だか意地になっていたところもあり、万全の状態でなくても歌うんだ!みたいなつもりでいました。
でも冷静になって考えてみると、無理して歌うことにあまり意味がないことに気がつくのです。というか、僕が無理して歌っても誰も幸せにならない。
舞台に立つ以上は結果を出さなくてはいけないし、キ...


ャンセルしないという事はきちんと結果を出せるというアピールでもあるわけです。それで失敗すればそれが実力だと思われるし、お客さんにしても僕が自己満足のために無理に舞台に立つよりも、きちんと歌える体調の良い他のバリトンを聴きたいでしょうし。同僚も風邪をうつされたくないだろうしね。
こう書くと何だか被害妄想みたいだけど、要するに「風邪だけど頑張って歌いました」という和風の精神論で行動しても、評価の対象にはならないという事なのです。
オペラの上演の前に場内アナウンスで、あるいは上演責任者がカーテン前に出てきて「○×さんは今日は病気をおして歌う」という事を言うことが良くあります。以前に「日本におけるこのアナウンスは同情をよぶために処置だが、欧米では『コンディションが悪くてもこんなに歌えるぞ』という主張なのだ」という文を読んだことがありますが、まぁこれは誇張だとしても、意味合いに違いがあるのは確かですね。
大体本番の数が日本と全然違いますから、そういう意味でも危険は大きいんですね。

それで結局キャンセルすることを決心しました。やはり悔しいなぁ。今頃1幕の終わりと言うところでしょう。

まだうちは一家3人で病気していますが、長男の下痢が止まらないので、今日は僕が小児科に連れていきました。Dr. Friedrichという評判の先生なのですが、実際に初めて会ってみてすごいなぁと思いました。
僕が尊敬する河合隼雄さんが出されている、相手の著書を読んでの対談集「こころの声を聴く」の中に小児科医で子供のことに関する著書が多い毛利子来さんとの対談があるのですが、ここで毛利さんが大変印象的なことをおっしゃっています。
「子供はもともとじっとしていないものなのに、自分のマニュアル通り、型どおりに診察をしようとすると暴れられてかえって疲れてしまう。僕なんか子供が何かに見とれているときに口の中を見て、怖がってママに抱きついていたら背中から見ちゃうという風にやっている」というような内容ですが、まさに今日のフリードリヒさんの診察がそうで、へーっと思ってしまいました。まず健登に高い高いをしてやってから触診して、くすぐってという感じで臨機応変に、ほとんど泣かせないで見てしまいました。フリードリヒさんは大きな病院の小児科のチーフだったそうですが、派閥争いが嫌で自分で開業したそうで、小児精神科のお医者さんでもあり、えらーい先生らしいんですが、そういう人がこういう実際的というか子供最善の方法で診療をしているというのは良いなぁと思いました。まぁ小児科の場合子供相手に威張っても仕方ないんでしょうけど。
2001年10月31日(水)スクリプトで読み込み

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