「さまよえるオランダ人」プレミエ

いやぁ。やっと終わりました。「さまよえるオランダ人」プレミエ。大変好評のうちに終えることが出来ました。
僕としては、前に書いたかも知れないけれど、僕の声には本来ちょっと重すぎる役なんですね。僕は決してバスバリトンではないですから。もっと高い声なんです。
まぁでも、デヴィッド(ロンドンにいる僕の先生)も、問題ないと言ってくれたし、僕としてもドイツオペラの役柄に関しては発声的な迷いがないので、やることにしたわけですが。そういう意味では、ドイツ語でのイタリアオペラ上演に比べて迷いはないし、やるべき事ははっきりしているし、演出家のやりたいこともドイツオペラとドイツの演出家...


だからか相性も良くて、コンセプト的に疑問を感じる点が少なかったし、自分のペースで稽古期間を過ごすことが出来たのは大変大きなアドヴァンテージでした。もっとも2週間以上気管の炎症に悩まされてフルヴォイスで歌えない期間があったのは辛かったですが。

コンセプトとしては、物語を「ゼンタの妄想」とするハリー・クプファーの解釈をさらにすすめるものとして演出家は位置づけていましたが、その意図はおおむね観客に伝わったと思います。最後のゼンタの死のシーンがちょっと僕には納得できなかったけど。今回使われた版は、クプファーがバイロイトで使った版とは違って、救済のテーマで終わるロマンティックな後奏なんですね。そこでゼンタの自殺をあまりにも早く受け入れてしまう父親ダーラントのキャラクターが、1幕と2幕でのダーラントのキャラクターと食い違うし、大体あの美しい後奏と、自殺したゼンタに白い布をかぶせる合唱の動きが全然食い違っているし。まぁ仕方ないです。僕は一歌手でしかないから。僕のかかわる点については僕の意見は述べさせてもらったけど、やはり歌手がいちいち自分の解釈をごり押ししたら新しい演出の試みは何一つ日の目を見ないわけですし、大体演出家は僕の劇場での上司だから、力関係ははっきりしています。
でもブリューアー教授の今回の演出は、総合的にはとても成功していたと思います。演出家にブラボーがでていました。

新聞記事を入れておきます。これはモノローグでの僕の写真です。今回の批評では特に僕のドイツ語の発音「感嘆すべき発音の明晰さ」が誉められていますね。この記事ではバルバラのゼンタがまず絶賛されていて、その後に、「彼女と同じように、オランダ人を歌ったテルヒコ・コモリも賞賛とブラボーを獲得した。呪いに駆り立てられるオランダ人をマルティナ・フンガーによる(印象的な)黒いコート(これが長くて苦労したんだよな)の衣装と共に、彼も同様に説得力を持って演じた」とあります。そのあとちょっと低音に問題があるようなこと書いてあるけど。だからバスバリトンじゃないってーのに。

カメラマンから写真を入手したらアップしたいと思います。お楽しみに。

2002年10月2日(水)スクリプトで読み込み

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