だいぶ間があいてしまいましたねぇ・・・。すいません。
昨日は「アラベッラ」のゲネプロでした。
今回のプロダクションは1998年に新国立劇場と二期会の共催という形で初演されたものの再演です。
新国立劇場では、再演の場合は、初演の時とは稽古の条件が変わってくる「約束事」があるようで、たとえば、舞台でのオーケストラとの通し稽古(OHP)はありません。舞台ではピアノでの通し稽古(KHP)とゲネプロの2回しか行われません。
こんな難しい作品を上演するのに、「再演はこの条件でやることになっているので」と言う理由で、オケでの舞台稽古が1度しかできないというのは、...
僕らのの立場からすると納得が行かないものがありますが、まぁ仕方ないです。歌手は雇われて歌っている身ですからね。
というわけで、昨日のゲネプロは、舞台で、オーケストラで歌える唯一の稽古だったのですが、個人的には予想以上の「惨事」になってしまいました。僕はもともと、良く言えば積極的、悪く言えば興奮しすぎに音楽を作ってしまう癖があるので、自分でもそれをわかっていて、舞台ではかなりテンポ的に引き延ばして行かないとオーケストラとずれることがあるのです。
僕がこの自分の性癖をわすれて、自分が気持ちいいようにどんどん歌ってしまうと、オーケストラとずれるばかりでなくて、舞台上の芝居も、発生の技術的なことも「滑って」しまう感じになって、悪循環なのです。これは僕にとって、舞台にのるときの大きなポイントなのです。
昨日の稽古では、しっかりここのところは押さえて始めたつもりだったのですが、結果的にはかなりずれてしまったのです。
何でだろうと考えてみたのですが、一つ大きかったのは、歌っているときにオーケストラの音がとても聴きにくかったと言うことがあります。
この作品はオーケストラ部分がとても厚く書かれていて、演奏する人数も多いし、要するにオーケストラの音が大きくなるわけです。で、歌とのバランスを取るために、他の作品の時に比べてオケピットが低くなっています。
客席にオケの音が少な目に届くということは舞台にも少な目に届くと言うことで、その上今回は舞台の方にスピーカーでオーケストラの音を返すことをあまりしていないそうで、要するに歌っていて自分の声帯が鳴っているときはあまりオケが聞こえない状況なのです。
この前のKHPで、ピアノとずれたところはチェックしてあって、その辺は意識していましたから問題なくいったのですが、今まで普通に歌ってうまく行ったところで結構ずれてしまいました。
声のことや芝居のことを考えてみると、それほど悪くなかったのです。さっき書いた良くある「悪循環」にははまっていなかったので、多分これが原因・・・というか僕のもくろみとずれた部分です。
これは本番ではなんとか解決しないとなぁ・・・。若杉先生にも「興奮しすぎ!」と言われました・・・。すいませーん。
でも、ちょっとオケが聞こえないくらいで、どうしてこうなってしまうのかと、かなり落ち込みました。寝る前に録音を聴いたのですが、ちょっとショックでしばらく眠れませんでした。アラベッラのシンシアなんかはあまりずれていなかったしなぁ、と思ったりして。まぁ歌手としての経験の違いはあるけど。(実はそれが大きいのはわかってるんですが)
でも、また考えてみると、アラベッラのパートの部分はオケがわりと薄いというか、室内楽的なんですよね。マンドリカはいつもフルオーケストラを背負って出てくる感じだから。そしてオケが良く聞こえるかというと、そうではなくて、拍節感の薄い音楽なのでどぉーっとドナウ川が流れている感じなんです。
でも、他の人で、僕と似たつんのめり方をしていた方が何人もいらしたので、少し安心しました。同じ状況に陥った人が複数いるということは、まぁ同じ理由だろうと思いますから。
ここで、演奏がずれないことを最優先しようと思うと、やはり芝居で決まった立ち位置を変えて、オケの音が良く聞こえるようにもっとオーケストラピットに寄って歌おうということになってしまいますが、それでは今までの立ち稽古で作り上げてきたものが台無しになります。
オケの音のスピーカーでの返しを大きくするという手もありますが、もう本番しかないから「試してみる」事は出来ないわけです。
やっぱり再演だろうと初演だろうと、こういう音楽的に難しいというか複雑な作品を取り上げる時は、OHPが必要だと思うんですけどねぇ。どうでしょう。・・・単なる歌手の良いわけだろうか・・・
2003年1月30日(木)スクリプトで読み込み