不調でのオランダ人本番

いやぁ、昨日はまいりました。

アルテンブルクで、オランダ人の本番だったのですが、気管の炎症がとれていなくて。最初に不調であることをアナウンスしてもらった上で歌いました。

以前にも、「ドン・ジョヴァンニ」や「ランメルモールのルチア」の本番で、やはりこの気管の炎症が治らないままに歌ったことはありました。僕が今までに唯一キャンセルした公演であるリゴレットもこの咳のためのキャンセルでした。この気管の炎症というのは、いちど始まってしまうと長引くのですね。熱や声帯の炎症自体はすぐに引くんだけれど。学生の時にこの気管の炎症に1ヶ月以上悩まされたことがありました。
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以前は、僕がアデノイドを取る手術をしたせいで炎症がそこでくい止められずに気管に入りやすいのだという風に考えていました。誰かがそう言ったのでしょう。僕も当時納得したし。
でも今、息子の健登がやはりアデノイド除去の手術をすることが決まり、何人かの医者とこのテーマで話すのですが、必ずしもそうでないと言う人もいるのです。どうなんでしょうね。

僕らは、親としては、もともとあるものを取ってしまうことは出来るだけ避けたいと思っていましたし、その方向で今まで努力してきたのですが、ここに来て耳鼻科のお医者さんの意見としては、「もはや避けられない。迷う余地はない」というくらいアデノイドが大きいらしいのです。半年くらい前は「しないで済むかも知れない」と言う話だったんだけど。日本で魚沢山食べたらアデノイドばっかり育っちゃったのかしらん。
炎症すると余計に大きくなるのか、寝ているときはうまく呼吸できずに無呼吸が何秒か続いてしまうこともあり、見ている親としては気が気ではありませんし、いろいろと総合的にやるべきだと判断しました。

話がそれた。
で、オランダ人。なんとか歌ってきましたが辛かった・・・。
「ランメルモールのルチア」のエンリーコやドン・ジョヴァンニは僕の本来の声域にかなりフィットしている役なので、痰が絡みそうになったときや、声帯の鳴りが均等でなくなったときに、それでもうまくコントロールして最悪の事態を避けることが出来たのですが、このオランダ人という役は、とにかく僕にとっては重い役だから、それが難しかった。実際、エンリーコとドン・ジョヴァンニの時は「不調だとは思えなかった」「帰って良かったかも」と多くの人に言われました。不調の中で歌うので集中力がかえって増すのか、そういうことは得てしてあることなのです。

オランダ人では、僕の場合低音がきついのですが、逆に低音が要求される役なわけで、そこを逃げてしまうわけに行かないので、低音でも厚く声帯を合わせる必要があって、歌いながら声帯を大事に扱うような歌い方がなかなか出来ない。休めるのは間奏だけだから、2幕の2重唱、3幕の3重唱からオランダ人の名乗りのくだりはめちゃくちゃきつかった。なんとか歌い通しましたが。

驚いたのは、拍手が大きかったこと。最後の一人でのカーテンコールではえらいブラボーもらって口笛まで鳴ってました。やっぱり「つらくても頑張る」みたいなことは大事なんでしょうか・・・。
客席にいた何人かから話を聞きましたが、「不調なのはわかったが、それでも素晴らしかった」みたいなことを言われたので、良しとするべきでありましょう。
2003年4月22日(火)スクリプトで読み込み

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