2003.11.13
「第六の時」の稽古はいよいよ大詰めです。昨日ピアノでの通し稽古でした。コンプレットプローベとうちの劇場では呼ばれていますが、初めて照明、衣装が入り、オーケストラの代わりにオケピットでピアノが演奏する以外は本番と同じ条件です。
日本だと、こう言うことはあまりしないのだけど、このコンプレットプローベは歌手も全部巻き込んで、舞台の転換や照明の具合などをチェックする、言ってみれば舞台技術的な事が優先する稽古です。
転換がうまく行かないせいで、同じところを何度も歌わなくては行けないこともあります。日本だと全体的に歌手がより尊重されている気がす...
るのですが、なぜだかわかりません。職業として成り立っていないから逆に扱いは丁寧にされているのかしら?
まぁそれは置いておいて、先週にあった出来事を報告できなかったので遅まきながら。
あれは確か先週の月曜日。シュヴェリンという北ドイツの都市の劇場から留守電が入っていて「是非電話を下さい」と。何かと思って電話をしたら金曜日の「オルフェオとエウリディーチェ」の本番を控えているバリトンが病気になってしまって代役を探しているという。僕は2000年に新国立劇場の小劇場のプロダクションで歌っています。メゾ・ソプラノによって歌われることが多いので、オルフェオを歌ったことのあるバリトンといったらそう多くないはず。
僕はまだ急な代役で歌った経験がないので、一度やってみたかったし、もちろんOKしました。
ただ問題は、版と言葉。彼らがシュヴェリンで上演しているのは僕が歌ったバージョンと別のもので、おまけにドイツ語なのです。
このグルック作曲のオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」は初演はウィーンですが、その後作曲者自身や他の人間によって複数のバージョンが作られています。ベルリオーズバージョンというやつもあるらしい。
僕らは新国立劇場での上演のためにウィーン版をベースにして、パリ版からも少し持ってきているのです。僕自身がこの編曲というか版に関するオーガナイズをしたんだけど、なんと馬鹿なことに手元に楽譜がなくて情報が全くない!日本に置いてきてしまったのです。ドイツでオルフェオをバリトンが歌うこともないだろうと思って・・・。
それとシュヴェリンではドイツ語。これを数日で暗譜するのは無理・・・。
しかし、良く聞いてみると彼らの上演はバレエの本番で、歌い手は衣装を着るが完全なオペラとしての上演ではない。代役と言うことであれば楽譜をみてもかまわないという事になった。
とにかく楽譜をみないことにはどうしようもないので、楽譜を送ってもらうことにして次の日の朝には楽譜を見られるという手はずになって、一応一安心。
でも自分が歌ったバージョンのことがわかっていたほうが良いので、新国立劇場でのプロダクションで演出をした演出家のI氏に電話して(日本は夜中だった。ごめんねー)いろいろ聞きました。楽譜を探して親切に教えてくれました。ありがとうね。
で、これで今出来ることは全てやったぞ、と思っていたらその1時間後にまたシュヴェリンの劇場から電話。
「全く同じバージョンをドイツ語で歌ったことのあるメゾ・ソプラノが見つかりましたので・・・」
・・・
まぁ仕方がないですね。でもやりたかったなぁ。
2003年11月13日(木)スクリプトで読み込み