劇場存続の危機

以前にも、この話題について少し書いたことがありますが、その後続報をお伝えしていませんでした。

今週の月曜日に、やっと新しい雇用契約が必要なサインとともに有効になりました。これで、劇場の運営、運営資金は2008年まで確かなものになりました。当面の危機は回避されたわけです。新聞の記事では2008年まで16400000ユーロの予算が確保されたとありました。いまのレートで22億1400万円というところでしょうか。...




インテンダントから「合唱を全員解雇する」というプランが告げられたのは、2002年の11月の事でした。僕は日本での仕事のために帰国しており、その直後にゲラでの本番のために1週間だけドイツに舞い戻ったときに、この件についてオペラ部門全体での会議で話しました。

インテンダントから提示されたプランは、合唱全体の解雇、オーケストラのリストラ20人、というのが骨子でした。当然劇場全体が反対行動に出ました。それについて以前に日記でお伝えしましたが、劇場の共同出資者(ゲラ市、アルテンブルク市、テューリンゲン州)と劇場首脳との会議に臨む出席者を待ちかまえてシュプレヒコールをやったわけですね。

インテンダントは、この最初の提案の時に「劇場の従業員全員が、給料の賃上げ、ボーナスをあきらめるならば、このリストラ回避もあり得る」と言っていたそうで、この時点で彼は従業員が一致団結して賃上げ・ボーナス放棄をするとは思っていなかったのでしょう。

しかし、これが実現したのです。僕はこの採決の時は日本にいたので、日本からFaxで採決に参加しました。リストラされないであろう従業員の一人が「いやだ」と言ってもこれは実現しないわけで、この団結は、感動的なものでした。

そして、それを踏まえてインテンダントと共同出資者、つまりは市や州の行政に関わる政治家が何度も会議を重ねて、去年の夏前には一度合意を見て、一見問題は解決したかに見えました。その時のプランでは、オーケストラ奏者以外にはボーナスは支給されるが、5年間の給料賃上げをあきらめるというものでした。そして見返りとしてこの5年間はリストラはしない。

しかし、労働組合のひとつが、これに最終的には合意せず、また話は振り出しに戻りました。労働組合にも色々あって、オーケストラ奏者、合唱、舞台スタッフなど、所属する労働組合が違うんですね。僕もどれがどれというのは把握していないんですけど。
もともと旧東ドイツと旧西ドイツでは給料の格差があるのに、この5年間の賃上げ放棄によって、2008年には元々低い旧東ドイツの給料水準から、さらに10%くらい(だったと思う。いま手元に数字がないんですけど)低い給料水準になってしまうと言うのが理由です。

で、つまりはボーナスはあきらめても賃上げはするというバージョンにしたかったんだと思うんだけども、結果的にはこのプランに戻って月曜にサインしたようです。
オーケストラ奏者だけボーナスをもらえないのは不公平なようですが、元々の給料が全然他の従業員より高いので、仕方のない処置でしょう。しかもオーケストラは合併後ほとんどリストラされていないので、500席の劇場なのにオーケストラ奏者が97人いるのです。ソロの専属歌手がいまや9人しかいないのに、ファースト・バイオリンだけで15人いるというのが、人数的な不均衡を端的に示している気がします。劇場で一番金を喰っている部門ですわね。

合唱は、いまはどんどん減って26人です。定年で抜けたあとを埋めないようにして減らしてきました。

演奏者の中では専属ソロ歌手が一番給料が安いわけですが、それでも僕がこの劇場に来たときの14人から5人減っていまは9人です。9人のソロで、よくオペラやってますよね、ホント。

舞台スタッフは、僕が入った2000年の秋に100人規模のリストラがあって、これ以上減らすと舞台運営が不可能というぎりぎりのところまで減らされています。

ご近所のアイゼナハの劇場は、合唱全員のリストラが決まったようですが、本当にこのままではドイツの劇場文化は廃れてしまうのではないかと思ってしまいます。
もっとも、日本の状況に比べると、文化予算は削られていてもまだまだ多いんですよね。色々考えちゃいます。
2004年1月16日(金)スクリプトで読み込み

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