数日ベルリンに来ております。来月から魔笛の稽古が始まるので、稽古がない毎日ももうすぐ終わり。で、プライベートでゲラから離れる用事は今のうちに済ませて置いた方が良い。というわけで、ベルリンです。友人の森川栄子さんが今は新国立劇場の仕事のために日本に帰っているので、その間は彼女のうちを使わせてもらえることになっていたので。
車で行ったんですが、なんだか森川さんの家の付近は以前にも増して駐車スペースを見つけるのが難しくなっています。プレンツラウアーベルクという地域なんですが、最近ベルリンでも色々な意味で人気が高い様で、しゃれたバーなんぞも多いですし、その辺の影響かも知れません。
前回来たときは本当に大変で、1時間くらい駐車スペースを探し回ったような気がする。今回は幸い目の前ででてくれた人がいたんだけど、やっぱり空きスペースなんてありゃしない。だからベルリン滞在中は絶対車は出さないぞ!という事で電車で動いておりました。
前に書いたかも知れませんが、僕らがベルリンに来る目的の一つは「ささや」という日本食レストラン。シェフの佐々木さんは僕らと同世代で、とても気さくな方です。ここの料理がね。なにもかも!どれも!すべて!うますぎる!!!
最近はドイツの雑誌などでも取り上げられることが多くて、もう夜は予約を入れないととても入れないそうですが、お昼がねらい目で、僕らはいつも昼に行きます。今回も2回行っちゃった。
ベルリンで日本食レストランというとえらく値が張りそうに思われがちですが、ささやは値段もお手頃。常連の森川さんの話では、佐々木さんは料理で儲ける気はないのだとか。あれだけ美味しかったら倍の値段でもお客さんはいくらでも来ると思うんだけどねー。
どんなにおいしいかってね。これは表現するのが難しいのですが、今東京に行っている森川さんが「ささやに慣れていると、東京で外食してもがっかりしてばっかりー」と言っているほどなのです。
今日食べたバラチラシなんてね、5ユーロですよ。今のレートで約665円か。それでこの感動!昨日のチラシは9ユーロ!約1200円!この感動!どうしてくれる!?美味しい鰯が入ったという事で、鰯もつけてくれた!
僕は、いつも美味しい魚にありつけていないから、それでなおさら感動するのかも知れないけど、東京で日常的に魚を食べていたときの感覚を思い出しても、このささやの味は感動ものだと思うんですよね。本当に美味しいんです。
僕も登紀子ももちろんささやに行くのを楽しみにしてベルリンに来るんだけど、何と言っても楽しみにしているのは健登。健登はあまりに美味しくって踊ってしまった最初の幼児として佐々木さんの印象に強く刻まれた模様。今回もカウンターのはじっこに陣取って、佐々木さんのお寿司の握りぶりをじーっと観察しておりました。この間、クリスマスプレゼントとしておばあちゃんに「お寿司つくリセット」というおもちゃをリクエストしたのも、もちろん佐々木さんの影響。
僕ね、佐々木さんがされているお仕事は本当に立派というか素晴らしいことだと思っているのです。この学生でも手の届く値段(事実常連になっている留学生の多いこと)で、このベルリンで苦労して美味しいお魚を手に入れて、それを毎日僕らに届けてくれる。・・・まぁ僕はゲラから毎日は来られませんけどね・・・もっと儲けるつもりになれば儲けられる品質なのに。
本当に頭が下がります。素晴らしいです。僕も頑張らなくちゃ、と思います。
やっぱり味というのは文化、お寿司というのは日本の文化だから。僕らが美味しい日本の料理を健登に食べさせてあげたいのも日頃からの願いで、これはドイツにいると当たり前には出来ないのですね。嫁さんは健登に日本の味を伝えるためにすごく頭をひねっています。食材自体がゲラでは入手困難ですからね。まぁこれは別の話だ。
このドイツの文化の中心と言っていいベルリンの、しかもカルチャー的に一つの中心になっているプレンツラウアーベルクでその日本の文化を伝えて、堂々と他の文化と渡り合っている。というか、紹介してある雑誌の記事をいくつも見ましたけど、どれも絶賛しているものばかり。当然ですね、これだけ美味しいんだもん。
佐々木さんも、食材のことはかなり頭をひねっておられるようです。日本の食材を使うとどうしても高くなっちゃうから、ドイツでふつうに手に入るものを使う様にする。色々実験する。例えば、しそというのはドイツでは冬を越せないのでなかなか手に入らない。入っても大変高い。で、佐々木さんはアラブ系の八百屋さんで味が酷似しているものを見つけてそれを使っているのですが、これが本当にしその味なんですね。この間来たとき、少し分けて頂いちゃった!ゲラで大事に食べました。
・・・このしそもどきの話は続きがあって、実は森川さんが年末にゲラに来てくれたときに、ベルリンの八百屋で探して買ってきてくれたのです。その話を今回佐々木さんにしたら「知ってますよ!だって栄子さん、『見つけた!』って言ってうちに見せに来たもの。」だって。