昨日、「魔笛」のプレミエが無事に終わりました。無事とは言っても、結構波乱含みでしたね。ゲネプロを終わった時点で演出家が降りると言い出すし、転換など全然うまく行っていないのにろくにダメ出しもなくて。出も結局はプレミエ当日に緊急の稽古が入り、一応問題は全てクリアした上でのプレミエとなりました。
詳しく書くのは機会を改めますが、お客様の満足度という点でも大変良いプレミエになったと思います。演出家のブリューアー教授にもブラボーや口笛がかかっていました。僕の予想通り、一番の拍手をもらったのはパミーナだった。彼女は本当に素敵なパミーナを見せ、聴かせてくれました。このパミーナのフランツィスカは何とまだ25歳!大学出て間もないという感じですね。でも、素晴らしいですよ。これからが楽しみです。
タミーノのカールステンも良かった。パパゲーノのエルマーもね。エルマーは「フィガロの結婚」でフィガロを歌ってくれていて、それ以来とても仲良くしています。カールステンもエルマーも僕と同い年なんですよ。二人ともゲスト歌手だけど、気があってね。僕は今までこういう環境がゲラでなかったので大変嬉しく思っています。声のこと、芝居のことなど、心おきなく話せるのです。やっぱり同世代だと気軽で良いです。
ところで、僕は今回、弁者を歌っているわけで、この役は小さい役の割に重要なのですが、今回は演出上、余計に役どころが大きくなっていた。僧侶2の分の台詞も引き受けて、いわば二役分でした。そして1幕フィナーレのタミーノとのやりとりは、「魔笛」一番の見せ場という人もいます。
僕にとっては、この歌う部分は、とても楽な部分なので、どちらかというと関心というかエネルギーを使ったのは2幕の台詞の箇所。全「魔笛」で一番長い台詞のシーンで二人分の台詞を引き受けたので、ほとんど僕だけがしゃべっているような感じになって、ドイツで台詞初挑戦の僕は緊張しました。でも、舞台稽古に入ってから、芝居的にも色々違うことを試せるようになってきて、プレミエはかなり自由にやれました。自分としては満足しています。
そう、そして僕は今回、はげでした。写真を見ればわかりますね。で、舞台装置に丸とか半円が多く使ってあったので、その辺を掛けてプレミエ・プレゼントのカードの文句にしました。もう伝統に近くなっていて、これは12作目。コレクションしてくれている人も少なくないのです。今回はこのプレゼントの完成度、結構高かったと思っております。
パパゲーノのエルマーが終演後に「お前の声はすごく男性的で芯がある。お前に比べたら俺の声なんか軽いよなぁ」と僕に言うのですが、彼はそれこそオランダ人とかヨハナーンとかをマインツで歌ってきた人で、そんな人にそういわれると、また僕は自分の声がどんな声なのかわからなくなってきてしまう・・・。まぁ男らしいと言われたら嬉しいけどね。
ナブッコが僕には重すぎるというのはまだ理解出来る。でも人によってはリゴレットでさえも重すぎるという。モーツァルトがちょうど良いとかね。
かと思うと、僕のヴォータンを「理想のヴォータン」と言ってくれる人もいるわけで、本当にわからなくなります。でも、「フィガロの結婚」の伯爵ははっきりと問題を感じたので、少し重たくなってきているのは疑いないですね。