阪哲朗さんのゲラ来訪



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「魔笛」のプレミエが終わって少し落ち着くかと思いきや、コンピューターがクラッシュしたことは書きました。そして、今日30日は健登の誕生日。でも僕は、朝「ブロウチェク氏の旅」のオーケストラ付き舞台稽古、夜はそのブロウチェクの本番。とほほ。全然暇にならん。


実は昨日までの三日間、指揮者の阪哲朗さんがゲラにいらしていました。ゲラのオーケストラのコンサートを指揮するためです。以前に掲示板などでも書いたと思いますが、阪さんは来シーズンからゲラと同じテューリンゲン州のアイゼナハ市立劇場の音楽総監督に就任されます。これは結構日本でもニュースになったのではないかと思います。
そして、このゲラも音楽総監督を捜しているところで、阪さんも候補になっていたのです。それも有力候補に!でも、残念ながらゲラよりもアイゼナハの方が早かった・・・。この音楽総監督選びのオーディションにあたるこの4月のコンサートよりも先に、アイゼナハの劇場と阪さんが音楽総監督の契約を結んだことをニュースで読んで、僕はとても残念に思いました。もちろん阪さんにとっては音楽総監督への就任ですからおめでたい話だし、なによりアイゼナハの劇場と聴衆の皆さんにとってはすごい朗報だと思いますが・・・。僕はゲラに阪さんが音楽監督としていらしたら、きっとすごく良いだろうなぁと思っていたのです。


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ともあれ、このアイゼナハへの就任は決まっても、コンサート自体の契約はあるわけで、阪さんの指揮するうちのオーケストラのコンサート。行ってきました。ソリストの同僚のイローナ・シュトライトベルガーが、カンディローブという作曲家の民謡をベースにしたオーケストラ歌曲のソロを歌いました。これは室内オーケストラ編成の演奏会で、他の作品もハイドンのシンフォニーなど、編成が小さいもの。
でも、阪さんも言っていましたが、これが難曲揃いでね。室内オーケストラ編成だけに、オーケストラの一人一人がソリストのような技量を要求される曲が多い。うちのオーケストラは「魔笛」のプレミエを終えたばかりで、ちょっとそういう意味ではかわいそうでしたが、とにかくこの作品群の演奏のためには稽古が少なかっただろうなぁと思いました。阪さんも「あと二回稽古がほしいなぁ」と言っていましたよ。
コンサートの本番を聴かせてもらったのですが、本当に素晴らしかった。阪さんにも申し上げたのだけど、ハイドンのシンフォニーというものがこんなに面白いとは知らなかった。特に4楽章がすごく良かったです。
あとで僕と仲の良いオーケストラ奏者も言っていたけれど、阪さんは自分の音楽のやり方を無理強いするタイプでなくて、演奏者の自発性を引き出すタイプ。それでいて気がついたらすっかり阪さんの音楽の中にみんながいる、と言う感じで、何しろオーケストラのメンバーがのびのびやって、彼ら自身の、自分の音楽になっていた。それでいて阪さんは常に全体に目を光らせていて、オケのメンバーが少し枠からはずれそうになると、本当に素早くそこをコントロールする。これは本当に名人芸というか、阪さんの音楽性だけでなく人間性もが反映された、本当に素晴らしい演奏でした。印象的だったのは、阪さんがオケのメンバーに、その時その時の主導的な楽器や声に耳を澄ませるように注意を喚起して、それにオケのメンバーが命令されるのでなく自分の注意力によって、耳で聞くアンサンブルをしていったところです。
阪さんと一緒に仕事したかったなぁ。これからいつか機会があるかも知れないですけど。ゲラで、と言う可能性はとりあえずなくなってしまったのが残念です。
終演後に楽屋におじゃまして一緒に写真を撮らせてもらっちゃいました。阪さんも写真を撮るのがお好きだそうで、ご自身のホームページではご自分の作品を紹介されていますね。
コンサート初日に昼食をご一緒させて頂いて、音楽の話だけじゃなくてドイツ生活の話や民族、文化の話など、色々面白い話を聞かせて頂いたのも良かった。本当なら我が家に来て頂きたかったんだけど、健登が病気だった上に健登の誕生日パーティーを健登の回復を見越して強行しようとして準備中だったので、とても人をお呼び出来る状態でなかった。残念。

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