改築のために取り壊し中の劇場の中で稽古をしています。もう劇場のオペラ用のホールの方は完全に工事現場になっていて、立ち入り禁止です。ちょうど劇場から、このオペラ用ホールの客席を運び出しているところで、なんだか正に「これから劇場が空になるんだなぁ」という、なんだか感慨深いものがあります。客席こそ劇場の象徴、という感じがしますから。
そんな改修中の劇場ですが、コンサートホールはとりあえずまだ手をつけずに残されています。で、ヴァネッサの稽古はコンサートホールで行われているわけですが、これはある意味ですごく贅沢ですねー。豪華なシャンデリアの下で立ち稽古。しかも音響はすごく残響の残る、いわば「リッチ」な音響。
タイトルロールを歌うザビーネ・パッソーの体調がいまいちなのが気になりますが、稽古は順調に進んでいます。マティアス・オルダーグの演出は、ある意味予想通り、作品の本筋を損なうことなく強調するいつもの手法で、作品に見え隠れする狂気がはっきりとした形で提供される様になっています。詳しいことはまたあらためて書こうと思いますが。
さて、明日の土曜日は日本で、NHK・FM放送の「名曲リサイタル」放送の日です。朝9時からということなので、ドイツの僕らは寝ていることですねー。多分後で音源は何らかの形で入手できると思うのですがとりあえずすぐ聴けないのが残念です。
多くの皆さんに聴いて頂きたいです。
前にもどこかで書いたけど、やっぱり録音の場合とお客様の前で歌う場合ではかなり歌うときの自分としての姿勢が違うのだけど、このNHKの収録では両方の条件を満たさねばならず、ある意味きつかったです。本来、録音で要求される、完全無比な声のコントロールに気持ちを集中できない感じがあって、ちょっと録音としては傷もある様な気がするのですが、取り直しなしだし、まぁ仕方ないですね。傷のない演奏になっていることを祈るばかりです。(僕は収録後に録音をチェックすることは出来なかったので)