「椿姫」の最終公演

昨日はヴェルディ作曲のオペラ「椿姫」の最終公演でした。


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プレミエは2004年の9月でしたから、1年半以上前になりますね。最初はゲラでプレミエがあり、その後アルテンブルクへ移りました。
この最終公演の僕にとっての意味合いというのは、一つはしばらくヴェルディのオペラとお別れだなぁ、という事。僕のヨーロッパデビューはプラハ国立歌劇場での「椿姫」ジェルモン役だったし、ここゲラの劇場へのデビューも「リゴレット」のタイトルロールだった。でも、今劇場で上演されている演目の中にはもうヴェルディはありません。新制作のヴェルディは来シーズンは予定されていないので、しばらくヴェルディのオペラを歌うことはないわけです。残念。
そして、もう一つ。これで僕は実質的に僕のシェフ(上司)であったProf. Blüherブリューアー教授ともお別れすることになります。あと数日で彼の命日 だけど、命日を待たずして、彼の演出した作品、そして5年の長きにわたった、極めてインテンシヴな彼との共同作業とも別れを告げることになりました。


そもそも、僕を雇ったのは彼なわけです。ブリューアー氏がこの劇場にオペラディレクターとして赴任する際に行ったオーディションで僕は雇われたわけで、その時すでにリゴレットを歌って欲しいと言われていました。


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いくつの作品を一緒にやっただろう。そのほとんどがヴェルディとモーツァルトでした。


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「リゴレット」のリゴレット、「ドン・ジョヴァンニ」のドン・ジョヴァンニ、「ランメルモールのルチア」のエンリーコ、「さまよえるオランダ人」のオランダ人、「ナブッコ」のナブッコ、「フィガロの結婚」のアルマヴィーヴァ伯爵、「椿姫」のジェルモン、「魔笛」の弁者。8つのオペラでタイトルロールが4つ。本当に「濃い」共同作業でした。


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実はまだ「魔笛」の公演が一回あるので、それを持って彼の演出がすべて公演終了となりますが、「魔笛」の僕の役、弁者という役は、重要な役だとはいえ、物語の行方を左右する役とはいえないと思います。それもあって、稽古でのブリューアー教授との関わり合いもあまり濃いとはいえなかった。僕としては、彼と戦った、あるいは彼と共に戦った作品の最後としてはこの「椿姫」を挙げたい。


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最終公演ですから、本当にこれでおしまいなわけだ。公演の途中でアルフレード役のマティアス・シュルツから「ブリューアー氏の兄弟が来てるみたいだよ」なんて聞いたから余計に、「なんとしてもブリューアー氏が喜ぶ最終公演にしたい」と力が入る。


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今起こっている劇場のごたごたとか、日本での仕事の仕方とか、最近色々考えさせられることが多いのですが・・・これも4月に元気がなかった理由の一つだけど・・・僕は、ここでもう一踏ん張りして、もう一目盛り、というか一ランク、と言うか、よりプロフェッショナルな歌手になりたい、と切実に思っている今日この頃です。


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この最終公演、そんな想いもかぶってきて、かなり気合いが入っておりました。
・・・でも「よりプロフェッショナルに」とか言っている側から、最終幕あたりではどうしても涙腺がゆるんできてしまう感じでありました。あまりに濃かったからねー。突然なくなっちゃう感じなんだもんな。
自分の演出した演目の公演は体調がよっぽど悪くない限り、必ず見に来て、後でダメをくれる。僕も僕で、公演ごとに新しい試みをしたりしているから、それが気に入れば取り入れられて、次の公演からはそれがスタンダードになるし、ダメならダメで僕はまた新しいプランを練る。ブリューアー氏との共同作業の中では、プレミエが終わっても作品は止まらずに育っていったのです。・・・これを嫌がっている同僚は多かったですけどね。プレミエが終わったんだから、もう放っておいて欲しい、好きにやらせて欲しい、とね。
僕にとっては、カーテンコールの時に袖にブリューアー氏の姿が見えない、と言うのが彼が亡くなったことを実感させる一つの「絵」でした。
 
良い公演だったと思います。ブラボーもたくさん飛んでいたし。大体僕はこのジェルモンという役ではいつも良い評判をいただくのですが、今回は特に緻密に歌おうと試み、ある程度成功したと思います。
よりプロフェッショナルに。言ってみればこのドイツでの仕事、最初の5年間に決定的な影響を受けたブリューアー氏の演出との決別は、僕の「ブリューアー時代」の終わりなのかもしれない。来期からインテンダント、首脳陣も変わるからね。さぁ頑張るぞ。


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余談ですが、来シーズンから、うちの劇場の名前が変わります。会社の名前が変わるだけで、ゲラ市立劇場とか、アルテンブルク市立劇場という名前は残るんだけど、二つ合わせての呼び名が変わるのです。
ここ11年間「Altenburg-Gera Theater GmbH」だったのですが、8月から「Theater & Philharmonie Thüringen」になります。アルテンブルクーゲラ劇場だったのが、・・・うーん訳しにくい。そのままカタカナにしても通じるかな。劇場&フィルハーモニー・テューリンゲン、という事です。
ちなみに現時点では内部ではこの新しい名前、非難囂々です。僕は悪くないと思うけど、正確にはThüringenでなくてOstthüringen(東テューリンゲン)だと思うんだよね。この「背伸び」がこの名前の意味なのかなとも思ったりしますが・・・。
 
そう、それからトッパンホールのジョイントリサイタル、2席連番とかではあまり良い席は残っていないみたい。来てくださる方で、まだチケットをお求めでない方はそろそろチケット確保していただいた方が良さそうです。情報ページ にチラシの画像もアップしました。


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HPのチケット申込ページから好評発売中です。今もなだらかに(?)少しずつチケットが出ている感じですが、そろそろ僕の預かったチケットもなくなるかな?CDも予想に反して(?)よく売れております。ありがとうございます。この間、また追加を日本に送ったので、品切れの心配はありませんので〜。

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