一度ゲラに戻って一息つき、今度はベルリン公演

ザルツブルク音楽祭での公演日夜中にゲラに戻り、数日ゆっくりしました・・・といっても、ためていた仕事もあったので本当に心からのんびりした訳じゃないんですが、やっぱり我が家は良い!ぼくは「おうち大好き人間」なので・・・。

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ベルリンから戻ったらもう劇場のシーズンが始まっているので、これが夏期休暇の最後の数日と言うことで、少しでも出来ることをしようと、健登とBiermannplatzにサッカーをしに行きました。健登は、ともすると頭を使う遊びに偏りがちなので、出来るだけ連れ出して体を動かすことを一緒にやろうと思っています。いったんやり出すと喜んでやるんですけどね。東京ではきついスケジュールの中、何とか1時間でも30分でも健登と近くの公園でサッカーをするようにしていたので「パパとのサッカー」はルーチンになってきていて、これは何とか続けたかったのです。



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僕自身がサッカーをやっていたので、教えるのも結構面白い。最初はでたらめに蹴っていたけど、この日は一応インステップキックを教えてみたら、何度かに一度はヒットするので、本人も楽しくなったようです。

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もう一つ、ゲラでの事というと、バレエダンサーの史ちゃんから預かった猫のリンゴちゃんのお世話も続いております。ベルリンに行く間はペットホテルに預けたんですが。最初はびくびくしていたけど最近はすっかり慣れてくれた。
この写真、撮ってみて何か見たことがあるなぁ、こんなの、と思って考えてみたら、七国山病院にサツキとメイを届けた猫バスに似てません?

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荷造りの時は、まぁやるだろうなぁと思っていたらちゃんとトランクに一度入ってくれた。
 
で、30日にベルリンに向かいました。予定では嫁さんと健登は先にICEで行くはずだったんだけど、一緒に行けるならそのほうがいいや、という事で・・・健登の「最近ずっとAutobahnのってないからのりたい!」というリクエストもあったんですが・・・30日に一緒に車でベルリンに向かいました。ライプツィヒ手前ですごい渋滞があって、ベルリン到着が予定よりすごく遅くなってしまった。

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ザルツブルクからベルリン入りした皆さんと、アレキサンダー広場の近くのビアホールで食事しました。ホテルがアレキサンダー広場の駅前だったので、近いし、やっぱり一度はドイツ料理を食べていただこうとここにしました。大変好評で良かった。
ここは、以前はアレキサンダー・ブロイという、地ビールがおいしいビアホールだったんですが、一度つぶれまして、そのあとはそこで造っているビールを出しているのかなぁ?どうだろう。

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健登は、まりさんのご子息、大雅くんに遊んでもらって大喜び。きゃあきゃあいって遊んでました。
 
さぁ、そして翌日はいよいよ、ベルリン・フィルハーモニーへ!

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僕は、実は一度ここの大ホールで歌っているのだけど、その時はアマチュアオーケストラの公演で、僕もまだベルリン芸術大学の学生でした。曲はヴェルディのレクイエム。今年夏に久しぶりに東京で歌った曲です。
それよりも、僕にとっては、観客として何度も何度も通ったホールです。ベルリン・フィルの定期公演がほとんどでしたが、それぞれの演奏会が印象深くて、色々な思い出があるところです。そこにプロとして、しかもイタリア最高のオーケストラと舞台に立つというのは感慨深いです。

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この写真、どこだかわかります?客席最後部の立ち見席です。ここが一番音響的に良い場所なんですよ。よくここで聴いていたのです。懐かしくて、練習の間、少しここに立って聴いていました。

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この舞台、やっぱりかっこいいですねー。ワインヤード型のコンサートホールの最高峰と言っていいんじゃないでしょうか。
実は音響には面白い部分もあって、Aブロック、Bブロック(一番前とその次のブロック)だと、どんな音もよく聞こえるんですが、C,Dブロックは、ちょっと力んだ声とかは余りよく飛んでこない。さっきの立ち見席は、そういう意味で「良い声しか聞こえてこない席」とも言えると思います。
RAIのオケのインスペクターも稽古中にずっとホールの中を歩き回って響きを聴いていて「素晴らしいホールだ!」と感嘆の声を上げていましたよ。

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ベルリン公演にはヘンツェ氏が来る予定でプレトークの企画もあったのですが、体調が思わしくなく、キャンセル。残念ですが、またトリノ公演には来てくださるとか。

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GPでは、声は抜きますが、全てを通して稽古しました。僕は少し音響になじみたかったのでいくつかの箇所をフル・ヴォイスで歌ったのですが、マエストロ・アルブレヒトがそのたびに「声を温存して!」という声がかかります。心配してくれているんですね。
練習の最後に、「さぁ、本番が上手く行くかどうか、あとは神に祈りましょう」と言ったのには笑いました。

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そしてそのあとは、本日のメイン・イヴェント(?)の「ささや」です。本当は前日の夜にゆっくり行くという話もあったけど、水曜日は定休日。なので、GPのあとにみんなで乗り込みました。最初は11人の予約にしていたんですけど、増えてしまって18人。そう電話したら「うーん。何とかします」というお答え。でもちゃんと席はとれていて良かった。
いやー。いつも通り、うまかったっすー!。みんなも大喜びでした。日本を出てからだいぶ経っているし、ちょうど良いかと思いましてね。いや、決して僕が行きたいからみんなをつきあわせたというわけではござらん。
突き出しから「なにこれー、おいしい〜」という声が上がっていましたよ。うふふ。佐々木さーん、今日もおいしいお寿司をありがとう!!

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本番前に、もうチェックアウトして、コンサート会場のベルリン・フィルハーモニーから直接ゲラに向かうことにしました。翌日の朝10時から立ち稽古なんですよ・・・。ショスタコーヴィッチのオペレッタね。この翌日の稽古にちゃんとでるというのが、ベルリン公演への客演休暇をもらう条件だったので仕方ありません。本番のあとに300km弱のドライブというのはしんどいけどね。
なので、部屋で少し休んだらせっせと荷造り。本番前に荷造りってのがなんだか続いてるなー。ホテルの窓からの眺めは良かったです。僕は28階だったけど、他のみんなはもっと上だったみたい。

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フィルハーモニーの楽屋口近くに駐車したかったこともあり、早めにフィルハーモニーへ。当然舞台には誰もいないので、また「おのぼりさん記念撮影」です。今日はトリノで買ったNARA CAMICIEのシャツを着ることにしましたよ。これ、実は三原さんとおそろいなんだよねー。一緒に買っちゃったんですよ。

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三原さんが今日着てらっしゃるのは、やっぱりNARA CAMICIEだけど、別のシャツ。本番の時に袖で一枚パチリ。
 
コンサートですが、今回はほとんど満席でしたね。ザルツブルクにはあった字幕が今日はないので、果たして反応はどうだろうと思っていましたが、やっぱりザルツブルク音楽祭の時と同じように、お客さんがだんだん引き込まれていくのがわかりました。日本人のお客さんも結構いましたね。
演奏は、ザルツの本番を終えて肩の力が抜けたのか、ザルツよりのびのびしている感じでしたね。マエストロ・アルブレヒトは地元だから、このベルリン公演をなんとしても成功させたいという意気込みが感じられました。
マエストロ・アルブレヒトは、このベルリン公演のギャラを返上しているんですよね。そのあとの打ち上げでの話からすると、オケもギャラ返上したらしい。それくらいこのプロダクションは経済的に難しかったのですね。特にベルリン公演に関しては最後までもめていました。でも、最後はやっぱりスタンディングオベーションになって、僕らも何度も何度もカーテンコールに呼び出されて、本当に大成功だったと思います。
カーテンコールで気がついたんだけど、ゲラの劇場後援会の人が聴きに来てくれていました。Bブロックの後ろの方で立ち上がって手を振っていたのでわかりました。なんだかすごく嬉しかった。あとね、今回は健登が最後まで眠くならないで聴いていてえらかった!打楽器が面白かったみたい。

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終わったあとのレセプションは、近くのナツィオナル・ガレリーで行われました。放送局の主催だったのかな?そう、この公演もラジオで放送されます。
ナツィオナル・ガレリーでは「ベルリンー東京」という展覧会をやっているので、それもあったのでしょう。
ヴァイツゼッカー元大統領もいらしていました。僕は、オペラ演出家のバウエルンファイントさんと知り合いました。というか、この方とは色々つながりがあったし、ゲラの劇場で演出もされたんですが、僕がそのプロダクションに乗るはずが乗らなくなったりして、結局お会いしていなかったのです。
この方はベルリン・ドイツオペラの主席演出家として素晴らしい仕事をされてきた方です。日生劇場のこけら落としをベルリン・ドイツオペラが行ったときに初めて日本に行ったとか。ヘンツェ氏とも親交が深く、日本に一緒に行ったときにヘンツェ氏が「三島に会いたい」といっていたエピソードなどをうかがいました。興味深い話を色々聞けて、すごく得をした感じ。今日の演奏には大変満足された様子でした。
それから、やはり世界的な演出家のハリー・クプファー氏の奥様がGPに来ていて、知り合うことが出来ました。カウンターテノールのZviがクプファー夫人の生徒ですからね。ゲラの劇場での、僕のかつての上司ブリューアー氏がクプファー氏のアシスタントで、ブリューアー氏は僕をクプファー夫人に紹介したがっていたのです。演奏会にはクプファー氏も一緒に来ていました。クプファー氏の方はコンサートに足を運ぶことはほとんど無く、来ても休憩で帰ってしまうのが常だそうですが、最後まで聴いていましたよ。
 
打ち上げもそこそこに、僕は一人でゲラに向かいました。みんなはのんびりホテルでも飲んだそうだけど。いいなぁ・・・。
でね、おちがあるんです。次の日ゲラで立ち稽古に行きました。10時。指揮者と演出家が来ません。・・・どうしたんだろう、と思っていたら、指揮者は来た。そこで、制作部の人も来て演出助手に耳打ち。「今日は演出家は稽古に来ません」だと。
理由は告げられなかったけど、指揮のアードリアンからきいたら、・・・・二日酔いだと・・・。
0時半にベルリンを出て4時前について、ちょっと寝て、楽譜と台詞を見なおして10時に稽古に行ったのに!!!演出家は二日酔いで来ませんでした!!!
チャンチャン。

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