tick,tick…BOOM!を見てきました

久しぶりに、山本耕史さんの舞台を見てきました。RENTの作曲家のジョナサン・ラーソンが自分を主人公として描いた「tick, tick…BOOM!」です。

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30歳という節目を前に、自分のキャリアや才能を信じられるのか、信じて良いのか、迷いや焦りにさいなまれる若き作曲家の悩み、といったところですね。
今回のプロダクションは、ジョナサンを演じる山本さん自身が先月31日に30歳になるという事で、タイムリーというか、ねらいをすました企画です。ちょうど帰国時期にこんなおいしいプロダクションがあったら行かないわけに行きませんわ。嫁さんと一緒に三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに出かけました。


この劇場、実は前に一度来たことがあります。留学中に一時帰国していて、尊敬するわが師匠の勝部太氏が主役を演じた、「遠い帆」というオペラでした。それについで2度目ですが、雰囲気のある劇場ですね。それで駅に近いのが良いです。関係ありませんが、三軒茶屋のすぐ近くに、勝部先生に教えてもらった、超うまいチャンポン屋があります。茶沢通りの「来来来」というお店です。もう何年も行ってないなぁ。また食べたい。
 
はい。本題へ。
僕は、生での山本耕史さんの舞台は、去年のラスト・ファイブ・イヤーズ以来2回目ですが、今回も存分に楽しませていただきました。RENTがアーティストとしての転機になったという事は、山本耕史さん、あちこちで話されていますが、その作曲者のジョナサン・ラーソンの作曲したミュージカルと言うだけでなくて、そのラーソン自身のお話、しかも自分が今迎える30歳という年齢にまつわる話ですからね、思い入れもかなりあったんだと思います。
やっぱり歌がうまいですね。ほんと。夏も朗読だけじゃなくて歌ってもらうべきだったなぁ・・・。声が良い。やはり美声中の美声ですよ。音域も広いしねー。それと、やっぱり今回感心したのは、彼は耳が良いんだなぁと言うことです。これは単に聴力としての耳と言うことでなくて・・・いや、聴力もむろん良いのだと思いますが・・・音楽的な耳を持っていると言うことです。これは野口五郎さんからギターをもらって以来(?)自分が音楽をすることで鍛えてきた耳なんでしょうね。夏のデュオリサイタルで山本耕史さんに朗読をお願いしたかった理由の大きな一つは、山本耕史さんの役者としての音楽性だったのですが、これを再確認した感じですね。マイケルを歌ったゲイリーさん、スーザンを歌った愛内里菜さんとハモるときも絶妙の音程感覚でしっかり寄り添っていくので、すごく気持ちが良いですねー。
音程の良さというのは、場合によっては絶対音感があると音程が良いとか、「良い音程」という絶対的なものを守ることが出来る、という意味ととられがちですが、僕はそうでないと思いますね。ある意味で「あそび」があって、共演者の微妙な音程の変化に対応していく事が、現実の舞台の上での「良い音程」なわけで、和声感とかでもあるわけです。生な音程感覚というかんじかな。これが彼にはあるんですね。僕も歌手としては和声感を大事にして歌っている方だと思いますが、そういう意味で共通項があるのでは、と思います。うーん。やっぱり彼とハモるべきだったか・・・。
 
もちろん、芝居もうまいですねー。言うまでもないことかも知れませんが。他の共演者お二人が初舞台だったこともあると思いますが、先輩としてリードしていましたね。でも、お二人とも、初舞台とは思えない舞台度胸でした。ゲイリーさんの日本語に関しては、舞台を見る前は、アメリカ人の日本語が舞台で芝居として成立するかどうか疑問だったのですが、十分成立していましたね。英語をうまく交ぜていたので、そこでつながった感じがします。日本語の達者な外人って、結構テレビ業界に多いですから、そういう感じで受け入れられるのではないかと思います。僕は自分がドイツでドイツ語で芝居をしているので、どうもこういう場合は自分をオーバーラップさせてしまうのですが、言語としての難しさがドイツ語と日本語では段違いだと思うので、本当にこのゲイリーさんの努力には頭が下がりました。愛内さんは歌手だけあって歌は本当に魅力的だし、多くの役の演じ分けがすごく大胆で良かったです。これからもミュージカルをたくさんやって欲しいですね。
演技者としての山本耕史さんと、何らかの形で関われたら嬉しいんですけど、まぁオペラ歌手とタレントですから、難しいでしょうね・・・。もちろん、山本耕史さんという人を表現するのに、タレントというのは一番正しい定義でないのはわかってますが、オペラ歌手との距離を示すためにあえて言うならば・・ということです。
 
今回の「tick, tick…BOOM!」にうかがいます、という事は夏にコンサートでご一緒したときに山本さんにもお伝えしておいたのですが、今回はまぁかつての共演者特権(なんのこっちゃ)ということで、楽屋にも押しかけました。いや、制止を振り切って本当に「押しかけた」訳ではござりませんが。
ドイツから持参したおみやげをお渡ししたかったし、やっぱり直接おめでとうを言いたかったので。また何かでご一緒できたら・・・・みたいな話もしてみましたが・・・また企画して、ダメもとで当たってみることにいたしましょう。
 
このミュージカル、三軒茶屋では11月7日までですが、練馬の光が丘、横浜なでも追加公演がありますし、13日の仙台を皮切りに全国を回ります。興味を持たれた方、是非足を運んでみてください!
公式サイトはこちら

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