またまたロングドライブ、そして「華麗なる一族」

月曜日から火曜日にかけて、またちょっと出張(?)でした。例によって営業活動です。今度はザールブリュッケンで、ゲラからの距離は510km。用件は火曜日の午前中にザールブリュッケンなのですが、ちょうど新作オペラ「コジマ」の立ち稽古が月曜日から始まったところです。
始まった途端に稽古を休ませてくれと言うのも、ちょっと気が引けましたが、この辺が日本人の、ドイツであまり機能しない遠慮なのかな、みたいにも思ったし、何しろ必要があることだったので、演出家に掛け合って何とか休ませてもらいました。


でも、条件は月曜日の夜の立ち稽古は19時半までは参加すること、そして、火曜日の夜の稽古には出ること。火曜日の夜の稽古開始を1時間遅らせて19時にはしてもらいましたが、要するに24時間未満で往復1000km以上の道のり+宿泊(寝るだけだ)+お仕事をこなせと言うことだす。まぁ仕方あるまい。この「コジマ」というオペラは僕がいないと稽古が全然出来ないんですよ、基本的に。僕は常に舞台にいるし、どの場面も僕の演じるニーチェの体験だったりファンタジーだったりなので。
 
大変窮屈なスケジュールですが、一つ楽しみだったのは、ザールブリュッケンの劇場の専属第一バス歌手として歌っていらっしゃる松位浩さんにお会いできることでした。今までサイトに来てくださったり、メールで連絡を取ったことはあってもお会いすることはなかったのですが、やっとお会いできる事になりました。東京でも先月に新国立劇場で「さまよえるオランダ人」にダーラント役で出演されて、絶賛を博していらっしゃいます。
 
月曜日の立ち稽古は、少し延びて結局出発は20時半になってしまった。でも夜だからかアウトバーンも空いていて、約5時間でつきました。一度アウトバーンの乗り換えを間違えてしまったのと、ザールブリュッケンについてからえらく迷った。一方通行ばっかりなんだもん。やっぱりカーナビがあると便利だろうと思う今日この頃です。ドイツでもずいぶん普及してきましたからね。
で、2時には寝た。6時半には起きて、結局用件が済んだのは13時過ぎ。で、駐車券をなくして10分以上探し回る(松位さん、つきあわせてしまってごめんなさい)。やっと13時半には出発できました。稽古開始まで5時間半。渋滞がなければ間に合うはず。
 
・・・でも、あったんです。渋滞が。バッチリ止まってしまった。フランクフルトを過ぎて後300kmくらいの地点だった。事故渋滞で20分くらいはピッタリ止まってました。仕方ないので演出助手のクリスティアーネに電話して遅れるかもしれないことは伝えました。
のろのろ運転を経て事故現場を通り過ぎると、どうやらトラックが炎上した模様。2車線のところだったのが痛かった。でも起きたばかりの事故みたいで、駐車券紛失のロスがなければこの渋滞には巻き込まれなかったような気がする。まぁ仕方ない。
結局、稽古の開始10分前につきました。稽古着に着替えて、飛び込んだ。ふう。そのぐったり疲れた状態から3時間立ち稽古ですからね。これも結構きつかったっす。
 
松位さんとゆっくりとお話しできなかったのは残念でした。こう時間の制限があると無理ですわね。次回は是非ゆっくり時間が取れればと思います。日本からのおみやげ、と石垣島ラー油を頂いてしまいました。僕は手ぶらですいませんでした・・・。ありがとうございました!
実はもうひとかた日本人の歌手の方とお会いしました。ドイツで歌ってらっしゃる方です。ここに書いていいかどうかわからないので名前は伏せておきます。結構いらっしゃいますよね、日本人でドイツで歌っている歌手の方。
 
で、帰った後、ある友人の厚意によって入手できているドラマの録画を嫁さんとみました。もう最終回が終わっているものですが、当然航空便でも時間差が出来るわけで、みたのはその前の回。僕が熱心にみている理由の一つは、僕がここ数年ファンで、昨年の夏にはコンサートで共演した山本耕史さんが出ていると言うことです。銀平!いいね!「何で爆発事故なんか起こしたんだ!!」っての、良かったなぁ。
嫁さんは原作を読んでいたのでもう筋はわかっていたんだけど、僕は読んでなくて、終わった後の最終回の予告をみて、ちょっとビックリしてしまった。鉄平を殺して、良いのか?!僕は激しい怒りを覚えましたよ、はっきり言って。
・・・といっても、後でこの印象や意見は変わる可能性もあるとは思います。予告編みただけだからね。でも、今の時点ではそう思う。
ドラマの中の登場人物だけでなくて、見ている人も含めたみんなの夢や憧れを常人離れした精神的スタミナで引っ張ってきた鉄平を死なせたらダメじゃないですか。そりゃドラマとしてのインパクトはあるけど、そんな安っぽいもののために、彼を死なせちゃダメだと思うんだけど。彼の「影」がもうちょっと今までに具体的に描かれていたら、まだ納得も行く。彼の「悩み」は描かれていたと思うけど、不十分だと思うなぁ。あんなに彼を信頼して愛している人間を全部ほっぽらかして、勝手に自分の夢を胸に抱いて死んでしまうような人間にはとても思えない。死ぬことに彼の人間性の一貫性を見いだせない。僕には「エフェクト」にしか思えない。
銭高常務が立ち聞きしているところでの彼の振るまいとか、おぼれそうになった作業員を危険を「検討せずに」(「顧みずに」、ではなく)ほとんど条件反射的に飛び込んで助ける、あるいは第一回目の事故の場面もそうだけど、彼の行動モラルは人への愛に満ちています。その愛のかけらを残される家族や彼を慕う部下に分けてあげられないわけがない。そのモラルが壊れるほどのことが最終回で起こるならわかるけど、僕の想像では、その「モラル崩壊」を納得いく形で提示できるほどの伏線が描かれていないから最終回だけじゃ無理でしょう。
オペラのサロメとか、最後主人公が殺されて終わるオペラで、一見、何も「美しいもの」をもたらさないで終わるオペラもあります。でもね、それはいいんです。サロメの彼女なりの真摯な生き方、必然性は「生きて」いて、一貫性があるし、彼女の行動モラルは理解できるのです。一般的なモラルじゃないけど、そんなこと全然問題じゃない。彼女の真摯な生き様はヨハナーンのそれとぶつかって双方砕けるわけでそれは感動を呼ぶし、「美」を内包しているのです。・・・と僕は思います。はい。
 
このドラマは原作とはずいぶん違う感じになっているらしいですから・・・銀平のキャラクターもそうらしいけど・・・これは原作の問題じゃないのかもしれない。このプロダクションの台本の問題かもしれない。でも、最終回の予告を見終わった時点での僕の感想は「よくも、こんなひどい事をしてくれたな」ってかんじです。まったく。

“またまたロングドライブ、そして「華麗なる一族」” への6件の返信

  1. 「華麗なる一族」はラスト3回前から見たので不明な部分もありましたがなかなか見応えのある作品でした。私は同作家の作品を数冊読んだことがありますが、心に響く良い作品を書かれていると思います。近く原作本も読んでみるつもりです。
    ところで山本耕史さんとコンサートで共演したされたのですね!!!あの役者さんは若い頃から素晴らしい演技をしますよね?。個人的には木村拓哉以外の配役は作品にマッチしているように感じました。木村拓哉の演技が現代ぽい違和感があったのですが・・・最終回にびっくりなさらないように!(笑)
    「コジマ」での活躍を日本からお祈り致します!!!!!

  2. お久しぶりにコメントです!
    (でも拝見はしてましたよ〜)
    私はこのドラマ毎回見てました。仕事のときは録画して!
    で、山本耕史さんを見るたびに「あ〜この人MOSSOと一緒にやったんだよな〜」っていう印象があって・・・笑
    で、最終回を見て私もまったくおんなじことを思いました。
    なんで鉄平を殺しちゃうんだ〜って。
    あの人だけが要だった、というか、あの人が死んでしまったら何も意味が残らないというか。
    私は原作は読んだことがなく、でも有名な作品なので「最後に鉄平が死ぬ」ということだけは知っていて見ていたんです。でもなんか腑に落ちないので、原作読んでみようと思っています。
    しかし、キムタクの演技はどうもパターンが見えてしまって、どうしても気になってしまうんですよね。
    セット、道具にはかなりお金がかかっていて、細かい時代考証もされていたようですが、それにしては男性陣のスーツ(特にキムタク)の妙な細さに不満が残りました。(こまかい??笑)
    東京は今日、全国に先がけて桜が開花しました。
    お元気でご活躍くださいね!

  3. >姉御さん
    >saskia1217さん
    こんにちは。山崎豊子さんの原作というと、「白い巨塔」は古い方のバージョンでみたような気もしますが、あまり覚えていないです・・・。
    そう、山本耕史さんとのコンサート、聴いていただきたかったですねー。自分で言うのもなんだけど、良いプロジェクトだったと思うなぁ。またああいうのやりたいです。
    あれ、キムタクさん、何だか評判悪いですね。まぁお二人の言わんとすることは多分僕もわかると思う。
    でも、敢えて、彼の鉄平は良かったと言いたい。やっぱりうまいです。何よりも集中力がすごいと思う。同じSMAPだからか、香取慎吾さんとえらく似ているところがありますね。
    テレビ芝居と劇場の芝居は違うし、大体あれはドラマだし、といろいろあるけどその辺は置いておいて僕の感覚から言うと、一つの表情に対する手数をもうちょっと減らしてくれたら僕はもっと感動できたかと思うけど。でもこれは細かいことです。
    スーツのこと、確かにこれも細かいことかもしれないけど、僕もその辺の事・・・衣装ね、主に・・・少し気になりました。
    でも、聞いた話だけど、当時の衣装・建築などを厳密に再現することは、意識して避けていたんじゃない?ちがったっけ?

  4. teruさま
    そうなんですか〜、厳密な再現は意識的に避けていた、っていうのは知りませんでした。そうなのかもしれませんね。
    「一つの表情に対する手数をもうちょっと減らしてくれたら」
    そうそう、そうなんです。それがいつも気になるんです。それがいつもある決まった流れを作ってしまう、というかひとくくりのセットみたいに見えちゃうんです。
    慎吾くんのお芝居も好きだけど、私はいつも草なぎくんの出るドラマをわりとよく見ていました。脚本が出演者にとてもよく合っていたのでとても好きだったんですね。
    演技って、よ〜く見ているとホントに面白いです。

  5. 本当にお疲れ様でした。やはり渋滞に巻き込まれましたか…。私も同じくらいの距離を連日車で走って一度練習にそのまま駆け込んだことがありました。結構ボロボロになっているんですよね…こういう時って…。疲れをとって良いお仕事をなさってください。今度はこちらからそちらの方に向かって行く機会を作ってみます。

  6. >saskia1217さん
    なるほど、キムタクさんに関しては、僕らは似た感じの感想を持っているみたいですね。草彅君のドラマって、あの六本木ヒルズの会社のやつとか?
    ところで最終回、みました。これはまた改めて。
     
    >松位さん
    大変お世話になりました。
    そう、そういう時って、練習の時はまだアドレナリンと集中力で何とかなっているから、その後がくっと来るんですよね・・・。
    いつかゲラの方に来ていただけたら嬉しいです!楽しみにしています!

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