ドイツの劇場統計

少し前なんですが、東テューリンゲン新聞に興味深い記事が載ったようで、劇場に貼ってありました。僕は新聞を通常取っていないのですが・・・ちょっとコピーさせてもらって家で読んでみました。
ドイツの、特にテューリンゲン州の劇場の比較の記事です。


写真を見ていただければわかりますが、上の方に図で示してあるのがゲラの劇場と、テューリンゲン州の州都エアフルト市の劇場の比較です。
大まかに言うと、予算の比較では、ゲラが1820万ユーロ(約28億円)でエアフルトが2060万ユーロ(約32億円)で、エアフルトが1割くらい多い。でも、公演数はゲラが年間950でエアフルトが250。つまり、ゲラ(正確にはアルテンブルクとゲラ両方)はエアフルトの4倍近い公演数をこなしている。そして観客動員数はゲラが18万2000人でエアフルトが10万4千人で、ゲラが1.75倍・・・公演数が4倍近くあって動員数が4倍にならないのは、オペラ劇場の大きさが違うこと(エアフルトは800席、ゲラは約500席)と、ゲラとアルテンブルクでは100人規模の小さい劇場での人形劇や室内オペラなどの公演を多く行っていることから来ると思います。エアフルトにも小規模の劇場はあるかもしれないけど。
うちの劇場の公演数、集客数がテューリンゲン州で一番多いというのは知っていたけど、こんなにひらきがあるとは知らなかった。ビックリしました。
従業員数は両方とも約300人で同じくらい。でも仕事の量が全然違うわけですよ。公演数が4倍近いんだからね。でも、この仕事の量がまた劇場の中でも差があります。エアフルトが313人の総従業員数でオケが60人。でもゲラは総従業員数が301でオケが85人いるんです。オケの規模が劇場の規模にあっていないんだけど、これは前にも書いたとおり、二つの劇場を合併してから何度かのリストラがあったものの一番労働組合が強いオーケストラは人数が減りにくいわけです。100人の舞台スタッフがクビになったときもオーケストラはろくに減っていないと思う。
つまり、「非オーケストラ従業員」の数と公演数のアンバランスはここでさらに強められているわけで、歌手、合唱、舞台スタッフが特に厳しいローテーションの中で仕事をしています。オケの人たちは僕らに比べて本当に休みが多いもの。
この記事にある情報としては、あとは例えばシュトゥットガルトの劇場の予算がゲラの約5倍の9000万ユーロ(約140億円)・・・うらやましい・・・でも、公演数が1300公演をこなすという。まじ?平均一日に4公演くらいあると言うことですね、これは。劇場がたくさんあるんだろうけど、これはすごい。
でも、最後にこの記事に書いてあるのは、テューリンゲン州の人口に対する劇場席の比率が、他の州に比べて遥かに多いという事で、今問題になっている文化予算の削減を正当化するような記事になってしまっています。1000人の居住者に対して、テューリンゲン州では劇場の席が25席あるのに対し、ノルトライン・ヴェストファーレン州(デュッセルドルフが州都)では6席、ハンブルクでは3席しかないとのこと。

「この劇場統計を冷静に見てみれば明らかなことは、今予告されている痛みを伴う1000万ユーロの文化予算削減の後もテューリンゲン州が文化的地域といえることだ。あちこちで文化破壊と見なされているのは多少誇張といえる。その価値観に照らすと、ノルトライン・ヴェストファーレン州は現在すでに、文化的には「砂漠(荒野)」というべきだ」

うーん。最初はゲラの劇場のがんばりを示してくれて良い記事だと思ったのに。

“ドイツの劇場統計” への3件の返信

  1. 日本でもこの種の統計があるのでしょうか。
    東京と地方の格差は凄いのでしょうが。
    その東京、世界的にはどんな位置付けになるのでしょうか?

  2. 新聞を取っておられるのですね。すご〜い!!
    私なんか、新聞社の名前すら知らなくて、この「東チューリンゲン新聞」にびっくりしています。
    チューリンゲン州のの東側っていう意味なのでしょうか??
    だとすれば、イエナでも売られているンですね、きっと!!

  3. >ともさん
    日本でも何らかの統計はあるでしょうね。僕はよくわからないのですけれど。
    ただ、このドイツの劇場の統計は、どの劇場も国や州、都市などの公共団体から予算の大半を援助してもらった上で成り立っている「街の劇場」の比較なので、「私立」の演奏団体は対象にならないわけです。
    敢えて自虐的な言い方をすれば、日本の劇場はこの調査の土俵にのっていないわけです。この調査の対象になり得るのは新国立劇場ただ一つだけですから、比較する相手がいません。
     
    >えみちゃんさん
    いや、あの、新聞とっていないんですってば。これは劇場に貼ってあったのをコピーさせてもらったんですよ。東テューリンゲン新聞は、イエナでも売っている新聞です。OTZという略称で良く呼ばれています。

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