実はこの夏、新しいカテゴリーの仕事をすることになっています。この夏というか、公演は夏にあるのですが僕の仕事自体はその前の段階でするものなので、もうほとんど終わっているのですが。
そう、タイトルに書きましたが「訳詞」です。
学生時代に、すでにあった訳詞にかなり手を入れて上演をしたことがありましたが、それも一から訳したわけでもなく、自分一人でやったわけでもないので、僕にとっては新しい挑戦でした。でも、やり始めてみると、思ったより楽しく、また自分にとって無理がない作業だと言うこともわかってきました。
これは日生劇場のプロダクションで、作曲家のチャイコフスキーの生涯を、彼自身の音楽をまじえて綴っていく「音楽ドラマ」という形です。情報はこちらにあります。
ひのまどかさんの原作・構成で、チャイコフスキーのオペラ、交響曲、バレエから珠玉の名曲をちりばめていく、と言うものです。
僕が訳したのは、オペラ(正確にはオペラでなくて「叙情的情景」)「エフゲニ・オネーギン」から、タチアーナの「手紙の場面」とオネーギンのアリア、そして歌曲を二曲「ただ憧れを知るものだけが」「子守歌」の、合計4曲。それから交響曲を歌曲化したものがあって、これもひのまどかさんが作詞されたのですが、それを歌曲としてメロディーにうまく乗るようにアレンジするのも僕の仕事です。
学生時代の話ですが、僕は大学時代から大学院の頃にかけて「Cantanti Comici (カンタンティ・コミチ)」という団体を友人と結成して、オペラなどの公演をしていました。このコミチの事は、ホームページにもほとんど書いていないんですよね・・・。いつか書こう書こうと思いながらも、書くならきちんと書かなくちゃ、と思ったりするのでなかなか取りかかれず・・・。
コンサートも多くやりましたが、やっぱり活動のハイライトはオペラ公演で、ダ・ポンテ原作モーツァルト作曲の3つのオペラを上演しました。最後の「コシ・ファン・トゥッテ」では、三菱信託芸術文化振興財団の助成も取り付け、学生の活動としては大規模になってきていたのですが、僕自身が企画・構成と歌手としての出演も並行してやっていたので、体力的にも、僕の方にかかってくる責任という事でもかなり大変で、最後の頃ではもうにっちもさっちもいかなくなり、解散することになってしまいました。
でも、このコミチ、本当に僕の青春でしたね〜。というか、僕の舞台人としてのルーツというか、これなくしては今の僕はなかったし、コミチで一緒にやってくれた仲間には今でもとても感謝しています。ここで一緒にやった仲間と、後で仕事で一緒になると、「同じ釜の飯を食った」仲間ですから、舞台でも息のあい方が全然違うんですよね。
話がそれましたが・・・。そう、このコミチでは、わかりやすい訳詞で上演することをモットーの一つにしていたので、すでにあった中山悌一先生の日本語訳をベースにはしたのですが、そこからかなり時間をかけて、ナチュラルな訳詞を検討して上演を準備しました。「訳詞検討班」みたいなのを作って、組織的にやっていました。
ここで、訳詞をすると言う作業にはかなり慣れていたと言うことを、今になって認識しました。この時はオリジナルがイタリア語でしたが、今回はロシア語。僕はロシア語は独学で勉強したけれど、喋れるほどではなく、最初はできるか不安もありましたが、思ったよりスムーズにできました。
僕はドイツ語の教本でロシア語を勉強したのですが、文法が近いからか、日本語でロシア語を勉強するよりは理解しやすかったと思います。ロシア語は格が6つもあって、これは特徴的だと思うのですが、ドイツ語ではこれが4つ。「格」という考え方がない日本語からやるよりは良かったと思います。
それと、僕はベルリンの大学時代にオネーギンをドイツ語で全部歌っているので、この作品の構造やモチーフみたいなもの早くわかっているので、これも良かったです。
日生劇場の音楽ドラマ「チャイコフスキー」の、HPなどではまだ公演日などの情報が出ていないようですが、公演日は8月3日・4日・5日です。興味がおありの方はどうぞ!
近いうちに情報ページもつくりますので。