今日は午前中にHP(ハウプト・プローベ)、夜に本番のある野外のステージでGP(ゲネラル・プローベ)です。
昨日まで数度のピアノ稽古、オケ合わせで他の歌手の歌も大体聴きました。
テノールのハンス・アッシェンバッハはまず指揮から始めた変わり種で、歌い始めたのは4年前。...
それでももうメトでのトリスタンをはじめ、ライプツィヒでモーゼとアロン(僕の同門の先輩である妻屋秀和さんと!)、ワイマールで画家マティス、ローエングリンなど第一線で活躍している様です。今回のようにヴェルディばかりというのは彼にとっては珍しく、殆どのレパートリーがドイツものですね。
メゾのイーラ・ポタペンコ(カタカナで確となんだか間抜けだなぁ)はロシア人で今はロストックの専属歌手。エスタは今はドイチェ・オパー・ベルリンに籍を置いています。いやぁすごいメンバーだなぁ。
イェンスとハンスが口をそろえていうので気がついたんだけど、僕が一番このコンサートで出番が多いようなのです。そういえばそうだ。
リゴレットの全体の3分の2くらいを歌うし、それ以外にトロヴァトーレのアンサンブル一つにナブッコのアリア。これでも2曲減ったんですよ。
もともとのプログラムではナブッコの長大なフィナーレとトロヴァトーレのレオノーラとの二重唱も歌うことになっていたのです。減って良かった・・・。
それともう一つ良かったのは、暗譜しないで良いこと。
実はもう僕は大体暗譜はしてあったのですが、2回本番を歌った翌日にリゴレットをドイツ語で歌うことを考えると、イタリア語のリゴレットを暗譜暗譜とそればかりに頭を使っているとドイツ語に戻れないような気がしたりして。
サウンド・チェックを経てゲネ・プロでしたが、やはりスピーカーを通すと本来の声の魅力は減りますね。まぁやり方にも予算にも因るものなのだろうと想像はしますが。ちょっと残念です。満員なら3000人はいるそうですが、去年は満員の聴衆が、雨のなか傘をさして最後まで熱心に聞いていたそうです。
ロイターさんとは初めての仕事ですが、素晴らしい指揮者だと思いました。練習が少なくなってしまった関係で、オケのみなさんに作品を早く把握してもらうために、出来るだけオケの稽古につき合って欲しいと言われてそうしていたのですが、オケの音がどんどんかわっていきます。職人芸ですね。
そして何よりすごいと思うのは、そういう大指揮者であるにもかかわらず、歌い手が歌いたいところは歌いやすいように歌わせて下さって、自分の音楽を殺さずに相手の力を引き出すというのはまさに名人芸としかいいようがありません。「僕はあなたの伴奏だから」なんておっしゃるんだけど、まさに伴奏をしつつ、その伴奏が伴奏に終わらない魅力を持っているのです。
これはいつも若杉弘先生とご一緒させていただくたびにもつくづく思うのだけれど、若杉先生も強烈な音楽的キャラクターを持っているにもかかわらず、歌手にのびのび歌わせて下さるのです。何よりも、稽古の積み重ねによる音楽的効果も殺さずに、本番での細かいひらめきを生かすというのはすごいことですよね。こういうやり方によってのみ、ライブの音楽が生き生きと生命力あふれる流れを作って「やっぱり音楽は生で聴かなくちゃ!」とお客様に感じてもらうことができるのだと思います。
写真はそのロルフ・ロイター教授とステージの様子。75歳ですが、その若々しい指揮ぶりは年齢を感じさせません。
2001年6月28日(木)スクリプトで読み込み