この週末も「トスカ」と「コジマ」の本番でした。順番が逆だったけど。土曜日の夜がハーゲン市立歌劇場でのトスカ最終公演で、日曜の夜が「コジマ」のアルテンブルク市立歌劇場での第二公演でした。ハーゲンのトスカはまた満員ですごい盛り上がりでした。最終公演と言う事もあったのでしょう。
この二回のトスカは、ゲラでもカヴァラドッシを歌っていたリカルドと一緒でした。もともと彼が僕の名前を出してくれたのでこのハーゲン市立歌劇場での出演が実現したんですが、12月のピンチヒッターの時はリカルド自身は歌わなかったのです。
今回は男性主役陣二人はゲラと同じ顔ぶれで、僕らの衣装の色合いもゲラでの衣装と結構似ていたりして、二人とも何度か、これがゲラでのトスカであるかのような錯覚に陥りました。もう10回以上一緒にやったわけですからね。
そのゲラのトスカは2月3日の公演で一度休演。今度は2009/2010シーズンに再演されるそうです。その最後の公演だった2月3日は、僕は実は急性喉頭炎でキャンセルしたのです。その時は何も書かなかったんですけどね。二期会のワルキューレの前だしみなさんにご心配をかけるのも嫌だったので。僕のためにゲストの歌手を呼んでもらうと言う事は、この劇場に来て以来8年間で初めての事でした。
その時の公演がどんな様子だったかをリカルドに聞いたんですが、客席にいた彼の奥さんダグマーの話だと、張り出された配役表を見て、ご婦人方数人のグループが「Herr Komoriは歌わないの!彼目当てに来たのに!」と大騒ぎしていらしたそうで・・・。申し訳ない事をしました。でもそういう風に僕の舞台を楽しみにして下さる方がいらっしゃるのは本当にありがたい事です。
ハーゲンのトスカでは、2幕の大詰め、スカルピアがトスカを本格的に口説き始めるところでスカルピアはナイフでオレンジを剥くんですね。最初にDVDをみて演出をおぼえようとした時にまずこれでビビりました。日本人はああいう風にオレンジを食べる習慣がないし、歌いながらあんなに上手に剥けない・・・とおもったら、もう剥いてあるオレンジが用意されているのでした。考えて見れば当たり前ですね。でも最後のところだけは切っていなくてくっついているんだけど、この日はそのくっついている方、つまり向き終わりになるべきところから剥き始めようとしてしまって、一度剥き始めてからオレンジをくるくる回す羽目になり、ちょっと焦りました。
ちなみにこのオレンジをトスカに食べるようにしつこく勧め、トスカがそれを口にする事からスカルピアが性的に興奮する、というようなコンセプトでした。オレンジを切ったり割ったりするので、結構手がベタベタになりました。
その日はハーゲンに泊まって次の日またゲラへ。距離は約430kmで、日曜と言う事もあってほとんど渋滞もなく、コジマの公演の前に少し午睡をとりました。今度は全く違う作品スタイルだし、踊りもあるし、じっくり楽譜を見直さないといけない作品です。
この日は、僕の髪の毛が今すごく長めだと言う事もあって、カツラでなく地毛でやる事になっていました。若干見た感じが変わりますけど、かえって地毛の方が自然で良かったかも知れない。ヒゲも僕の地毛の色に合わせて変えてくれていました。
このヒゲ、巨大なんですが、アルテンブルクでのプレミエのGPのときに落ちちゃったんです。ゲラでの稽古でも本番でも一度も落ちなかったんだけど、どうやらマスティックスという接着剤の新品を使ったのが良くなかったらしいです。すこし溶剤が揮発して濃くなってきた古いマスティックスの方が良くくっつくらしくて。でもプレミエもこの第二公演も大丈夫でした。
リートを一緒に何度もやっているピアニストの片野理子さんがお友達と聴きに来てくれて、終演後にちょっとお茶をしました。理子さんとSimoneさんのお二人はハダカで踊るせいもあって僕がやせたのがずいぶん気になったみたいです。やせぎみの方が体調が良いのは間違いないので、このくらいでいこうと思っています。後は少し体を鍛えないといけないと思いますが。
僕はもともと薬を飲んでもあんまり効かない感じだったんだけど、やせぎみの時は割とちゃんと効くんです。あとやっぱり太りぎみの時は疲れやすくて体が重くて、ハードなスケジュールは全然こなせません。現実にゲラに戻ってから本来休養日の週末が全て本番でつぶれて、我々ソリストの契約では休日が振り替えられないので1ヶ月くらい休日が全くないのですが、それでも何とかなっているのは少し絞った事も含めて体調管理にかつてなく心を砕いているからだと思います。もっと精度を上げなくちゃいかんのですが。
ローエングリンの稽古の方も進んでいて、あとは2幕の最初くらいかな、全然やっていないのは。今週からは合唱との稽古になります。
コンセプトに関してはまた改めてかくつもりですが、一枚だけ舞台模型の写真を載せておきましょう。これは1幕冒頭で、左奥にある大きな板と言うか看板みたいなものは、Bautafelといって、建設事業が行われる時に施行者などの情報が示されているものです。そのスポンサーであり事業主になろうと言うのが僕の演じるテルラムントと言うわけです。